第22話 ラモンは待つ。

 夫人は寝室であろう部屋に入ると、手短にベッドを整えラモン達に勧めた。

 ラモンはそれに従いルシアを横たえる。

 それを見届けると夫人は、またパタパタと部屋を出ていった。


 ラモンはベッドの隣の椅子に腰掛ける。

 覗くと、ルシアは先程よりも険しい顔をしていた。


 外から楽しげな子供達の声が聞こえる。

 ラモンは手を膝に置き、ただ、待つことしかできなかった。


 そうしていると、また、家の奥から、再び足音が聞こえて来た。

 部屋の戸が開き隙間から夫人が顔を出す。


「今、お医者様を呼びましたからもう少し待っていてください。私は飲み水を用意してきますね。」


 そう言い戸を閉めると、三度パタパタと足音を立てながら遠ざかっていった。


 改めて見渡すと寝室にはベッドが一つしか無く、枕元に、少女と、今よりも若い夫人の写真がぽつりと置かれているだけだった。


 写真立てから目線をずらして、目を閉じる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る