第24話 急展開
「今……なんと……」
思わず出た言葉に真っ先に王が反応する。
「あっ、いえ、今のは……」
まずいわ。実を食べて開花する能力は魔王の探知。なのにお父様だなんて、不審がられてしまうじゃない。
「なぜ、お父様なんだ」
「ええと……深い意味は……」
「パパとはもう呼んでくれないのかっ!?」
「はい?」
「悪かった。お前が好ましく思っている男にいきなり好きなのかと無理に聞いてしまって。その……なんだ、今度彼も交えて食事をしようではないか!!」
「あの……」
「そうだな!! 2人で食事の方が良いよな!! 許可しよう」
「パパ!? 私の話を……」
「…………」
「お父様と言ったのは……私も成人前でしょう? 少し言い方を変えた方がいいかと思っただけですわ」
我ながら苦しい言い訳だわ……でも、あれは確かにお父様だったわ。なんとなく、もう少しで目が覚めそうなのがイメージだけでも感じ取れたけど、恐ろしいわね。もしこの実を本物の聖女が食べてしまっていたら、目覚める前に居場所を突き止められて、すぐにまた封印されるところだったわ。それどころか、まだ覚醒前ならそれこそ完全に討伐される可能性の方が高いわね。
「リアも成長したってことですわ、陛下。旅立つ前の娘の後ろ髪を引っ張るような態度をとってはいけませんわ」
「む……うむ……だが、まだ旅に出ると決まったわけではなかろう」
ふぅ、お母様のおかげでなんとかごまかせたわね。だけど……あっちのお父様がもし復活すれば、私がこの国を支配する計画がダメになるかもしれないわ……中身が私と訴えたところで関係ないわね。
実の娘から全てを奪った父親だ。今復活されるとこちらとしても都合が悪い。
「私……旅に出ますわ」
「っ!? やはり先ほど魔王に関する何かが見えたのですかっ!!??」
コードが強い力で肩をつかんでくる。
「えぇ……魔王が復活する予兆がみれたわ」
「そんな……リア様……」
シシアも思わず、人前だと言うのに名前で呼ぶ。
「…………リア、あなたが聖女の力を授かったと聞いた時から、今日の日が来る覚悟は出来ておりました」
「お母様……」
「私の体調が良くなったのもあなたのおかげよ。だから、どうか……身体に気をつけるのですよ」
本当は魂が魔族である私を産んだせいでお母様の体調がむしばまれたのだ。たとえ身内だろうが他人のエネルギーを喰らうことで魔族は強くなる。
「…………はい」
「そうか……では、あの男も呼んでこい」
あの男?? コードが連れてきたのは、すっかり忘れていたオリバーだった。
「っ!?」
「オリバーよ、聖女が先ほど旅に出ることを宣言した。魔王の復活を防ぐためだ……すぐに各国に通達を出そう。その中から選りすぐりの隊を募ろう」
「それはダメですわ!!」
「っ??」
そんなことされたら、本当に魔王を倒しちゃうじゃない。それに、私の正体がバレたらそれこそややこしいわ!!
「リア……なぜだ?? 魔王討伐の為とあれば各国から精鋭たちを集めチームを組むものだろう」
ううっ、そうなんだけど!! それは本物の場合なのよ!!
「……私が先ほど見た未来では、大勢の者からエネルギーを喰らい、魔力を増大させる魔王の姿を見ました。魔族は闘う相手から魔力やエネルギーを奪うことで己の力を得るのです。もちろん、上級魔族に限りますが……」
これは本当だ。今まで人間どもが苦戦していたのは、実は自分たちが自ら魔力源を供給していたからとは思ってもいなかっただろう。神から祝福を受けた聖女や勇者のみがその対象外になる為、前の戦いでは私はあえて聖女達との接触を避けた。
「そんな事実が……」
人間に有利な情報だけど、仕方ないわ。
「それに人数が多ければ他の魔族にすぐに気づかれてしまいます。今はまだ魔王が復活する前ですし、私1人で行った方が早いかと……」
「ダメだ」
黙って聞いていた王が即答する。
「それではお前も危ないだろう」
「私は神から祝福を受けていますので問題ありませんわ」
「……それなら、勇者を連れて行きなさい。彼も祝福を受けているだろう」
「…………」
オリバーからの熱い視線を感じる。
「でも、ほら……彼は私が祝福したのでしょう?」
主従関係があいまいなら、光魔法を使える彼を近くに置いておきたくないわ。
「光魔法が使えるのは聖女と勇者のみ。神から祝福された証拠だろう」
「それは、そうですが……」
ここに来て、黙っていた彼が急に口を開く。
「陛下、聖女様へ説得する許可をいただけますか?」
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