第22話 予言の中身

「ん……」


「リア様!?……目が覚められたのですねっ」


「シシア、ここは……私の部屋ね」


 いつもと同じ部屋だが、シシアもドレスを着ているということは、あまり時間が経っていないのだろう。


「まだ暗いわね」


「はい、パーティはお開きになりましたが、驚きましたわ。突然外が明るくなったと思ったら、リア様が気絶されていらしたんですから」


 そうね。確かオリバーに精神魔法をかけたのに、なぜかこちらが浄化されかけたのよね。それで気を失ってしまったんだわ。


「とにかくっ!! 1人で行動するのはお控え下さい!!」


「でも今回は、オリバーがいたわけだし、1人ってわけでは……」


「お控えくださいねっ!! まったく……とにかくご無事で何よりです。リア様が倒れているのを見た時には生きた心地がしませんでしたから」


 あいかわらず、シシアは甘い。普通、使用人っていうのは主に気に入られようとするものだが、怒る時は怒る。そのくせ、怒られた側よりも落ち込むのだ。



「本当は、今日はこのままお休みしていただきたかったのですが……リア様が目を覚まし次第、王の間に来るようにと言われていまして……」


 シシアの言い方から、王が絡んでいることが分かる。


 多分、事情を聞かれるんだろうけど、気絶していたから何も覚えていないって言えば良いわね。全部あの男に任せてしまえばいいわ。


「大丈夫よ、行きましょう」







「リア!! もう体調は問題ないか?」


 懐かしいわね。ここって生誕祭したところよね。生命の樹がなぜか大木になっちゃって、パーティ会場としては使われなくなったのよね。


「はい。ご心配をおかけしました」


 思ったとおり、父と母、コードがいた。シシアも一緒についてきたあと、下がろうとしたが、そのままで良いと言われる。


「今夜のことだが……」


 やっぱり何が起こったかの確認ね。


「他の招待客にはお前が奇跡の力を使ったと説明している。皆、聖女の光が見れたと喜んで帰って行ったが……本当は違うな?」


 ん!? なんか思っていたより深刻な表情をしているような……コードに関しては視線を合わそうとしていない。


「コード……ちゃんと伝えなさい」


「はい、陛下」


「な、何?」


「聖女様には、18の誕生日に新たな勇者様と結ばれる、とお伝えしておりましたよね?」


「そうね」


 それまでにこの国を乗っ取るつもりだとは口が裂けても言えない。


「多くの者が立ち合った中での予言ですので、あの後魔力を持つ若者が絶えず訪れるようになったんですよね。まぁ、陛下と私であしらっていたのですが……」


 それは初耳ねっ!? シシアやお母様を見るが2人とも視線をそらす。あぁ、皆んな知っていたのね。それにしても、人間が勇者かもしれない人物を相手にしないなんて変だわ。


「実はあの預言書には続きがあるんです」


「続きですって!?」


「と言っても、聖女様は当時のことも覚えてはいらっしゃらないとは思いますが」


「そっ、そうね!! その通りだわ。まったく分からないわね」


「聖女様が新たな勇者様と結ばれると言うところだけが大きく広がった為、名誉を目的に聖女様にお近づきになろうと考える者が出ているのですが……」


 まさに、ヤナンがそうだったわね。


「実はそれがあながち間違いではないのです」


「????」


「……予言では、聖女に選ばれる者は祝福を受け、光の力が授かるとあったのです。つまり、今までは神から選ばれた勇者の光の力が、聖女様によって選ばれるという前代未聞の予言でした」


 何ですって!!??

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