第13話


由美子は岡山市の小さなアパートに住んでいた




 仕事はしていなかったが




 なんと昔、宝くじで一発当てたのである




 だが、貯金は少しずつ減り続けていた




 両親は、子供のころに無くしていた




 男運は悪く、今までろくでもない男と付き合ってきた




 最近が田中である




 田中はお金をバンバンくれたため




 今までで最も長続きした付き合いだった




 だが田中は悪い男である




 その影響を受けたせいであろうか




 由美子も悪い女であった










 相正悟は鶴ヶ峰の駅前の通りを歩いていた




 最近は散歩するのである




 突然、向こうにいた色白の四十代くらいの美女が




 「相正悟さん」と呼びかけてきた




 相正悟はびっくりした




 「僕ですか」と聞き返した




 「そうよこっち来て」




 相正悟は女に近づいた




 女は長そでのシャツと短いスカ-ト」をはいていた




 女は相正悟を手招きして歩いた




 相正悟は女に付いていった




 


 由美子は相正悟をタクシー乗り場まで連れて行った




 「乗って」という




 「ちょっと待って、何でですか」と相正悟




 「田中から話があるの」と由美子は言った




 相正悟は田中について思い出した




 そしてタクシーに乗った








 由美子はどうしたらいいのか迷っていた




 相正悟をタクシーに乗せた




 ここからどう落とすかである




 お酒を入れるのが一番良いであろう




 「相正悟さん、あたしと一杯付き合ってくれない」




 と由美子は言った




 「はい、田中さんのことはどうしますか」と相正悟




 「それはあとで」




 と由美子は言った




 「わかりました」




 と相正悟




 問題はどんな店に相正悟を誘うかである








 「相正悟さん、あなたって普段どういう店で飲むの」




 と由美子は聞いた




 「僕は基本、店では飲まないです。若いころは飲みましたが」




 と相正悟は言った




 「待ち合わせの店ではないんですか」




 と相正悟は聞いた




 「う-んと、相正悟さんの好きな店でいいわ」




 と由美子が言った




 「お任せします」と相正悟




 「あたし、横浜あまり知らないんだけど」




 と由美子が言った




 「待ち合わせの近くで飲みましょう」




 と相正悟が言った




 「実はまだ待ち合わせしてないの」




 と由美子が言った




 「田中にはあとで連絡を取るわ、その前に私の話を聞いて」




 と由美子が言った




 「はい、わかりました」




 と相正悟




 「私たち仲間よ、これからは」




 と由美子が言った








 二人が入ったのは横浜の居酒屋である




 始めにお通しが通された




 相正悟はビ-ルを、由美子はレモンの酎ハイを注文した




 「タバコ吸ってもいい」




 と由美子が聞いた




 「もちろんです」




 と相正悟




 相正悟はメニューを見た




 ウィスキ-の山崎十年が気になった




 相正悟は居酒屋では食べ物より飲み物を気にするタイプである




 山崎十年を後で注文しようと思った








 由美子はどうしたらいいか考えた




 今日中に何らかの形で相正悟を誘わなければならない




 「相正悟さんっていつも何してるの」




 と由美子は聞いた




 「今はパソコンで文を打ったり、SNSやったり、勉強したりしてます」




 と相正悟




 「あと、散歩に行きます。今日みたいに」




 「どうやって僕を探したんですか」




 と相正悟は聞いた




 「GPS追跡アプリというのがあって」




 と由美子は言った




 「あなたの場合、田中に全てばれているの」




 と由美子は言った




 「そうなんですかでもその方が安全ですよね」




 と相正悟は言った




 




 「相正悟さん、あなたの今欲しいものとかって何」




 と由美子が聞いた




 「特にわからないです」




 と相正悟




 由美子は迷った、相正悟をだますのはたぶん簡単だ




 だがそれでは自分が悪い女ではないのか




 悪い女となって相正悟をだまそう




 と由美子は思った




 「これ、おいしいですね」




 と相正悟は焼き鳥を食べながら言った




 「じゃああたしも食べてみよう」




 と由美子は言った






 




 「相正悟さんってどんな子供だったの」




 と由美子は聞いた




 「何でもやってきました。いろんな時があって、どんな子供だったとは言えないです」




 と相正悟




 「団地育ちで雑多な人間関係に揉まれてました」




 「あと、母方の実家が飯田にあるんですけど、よく行って従兄弟たちと遊んでました。というより遊んでもらってました」




 「引越しや周りの環境が変わることが多かったので今は人見知りしないです」




 と相正悟は言った




 「得意な事って何」




 と由美子は聞いた




 「ボクシング 将棋 囲碁 です 残念ながら仕事じゃないです」




 と相正悟




 「セックスは得意」




 と由美子は聞いた




 「どうですかね せっかちなんで」




 「でもキャリアはあります」




 と相正悟は言った










 二人は店を出た




 夕方の五時である




 相正悟にとっては もう五時である




 「今さら帰らないわよね」




 と由美子が言った




 「そうですね」と相正悟




 「言うとおりにします、お名前は」




 「由美子と言います」




 「じゃあホテルいきましょう」




 と由美子は言った




 相正悟は天を見上げた




 「ああ 僕は簡単にからめとられてしまった」












 「横浜のラブホテルってどこにあるの」由美子が聞いた




 「こっちの方です」




 と相正悟は案内した




 


 二人は横浜のラブホテルのあるあたりを歩いた




 立派な建物の前で相正悟は足を止めた




 「ここなんかいいんじゃないですか」




 由美子は緊張してきた




 「どこでもいいわよ」




 「じゃあここにしましょう」




 と相正悟は入っていった




 「さすが相正悟」と由美子は思った










 鍵を受け取り、二人はエレベーターに乗った




 203号室である




 相正悟は鍵を開け、先に部屋に入った




 そこは思った以上に明るかった




 大きな二人用のベッドがあり




 まるいテ-ブルが一つ、椅子が二つあった




 相正悟はリュックを降ろし、椅子に座った




 由美子は少しぎこちない動きでベッドの上に座った




 「まだ酔ってますか」




 と相正悟




 「うん、まだ少し酔ってる」




 と由美子が言った




 「僕は酔ってないです」




 「先にシャワーを浴びてきます」




 と言って相正悟は席を立った










 シャワーを浴びながら相正悟は思った




 久しぶりの͡この感覚は「マキ」の時以来だ




 僕はこんなことをしていてよいのだろうか




 すると外で物音がした




 由美子だ 何かしている




 曇りガラスからは影しか見えない




 シャワー室のドアが開いた




 裸の由美子が入ってきた




 そして由美子は、相正悟の身体を愛撫し始めた












 次の日である




 相正悟は目を覚ました




 隣で由美子が寝ている




 相正悟はとてもお腹が空いていた




 腕時計を見ると朝の六時である




 相正悟は起きて着替えた




 ラブホテルでの朝は生まれて初めてだった




 テ-ブルの上に宅配ピザのメニューが書いてあった




 宅配ピザは二人では多すぎる




 と相正悟は思った




 そこでコ-ヒ-を沸かして飲んだ




 正悟がコ-ヒ-を飲んでいると




 由美子が目を覚ました




 「おはよう」と由美子は言った




 「おはようございます」と相性後も言った










 相正悟と由美子はLINEと電話番号を交換した




 「今日は帰ります」と相正悟は言った




 「疲れました」




 「二回で疲れたの」




 と由美子




 「そうですね」




 と相正悟




 「こっちから連絡するわ」




 と由美子が言った




 相正悟と由美子は別れた










 田中と由美子は横浜の喫茶店で待ち合わせをした




 「相正悟はどうだった」




 と田中は聞いた




 「すっごく良かったってそっちの話じゃないわね」




 と由美子は言った




 「彼は何でも言うことを聞くわ」




 「多分、教団のお金を盗む手伝いもさせられるんじゃないかしら」




 田中は楽しそうに笑った




 「ではそのようにしてくれ、報酬は教団の金庫の中にある」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る