第3話 機械室
「失礼します」
「忙しい所、すまないね」
報告書を提出した翌日、私は再び社長室に呼ばれた。社長室にはコーヒーの良い香りが漂っている。
「報告書は読んだよ。君がプロジェクトマネージャーとして出した結論は開発中止。[瀬咲愛]いや[試作AI]はアイドル足り得ないだったね」
「はい、意思を持った汎用AIの開発プロジェクトとして失敗です。前回や前々回に比べれば小さな失敗ですが」
前々任者と最初に取り組んだ汎用AIは危うく大惨事になる所だった。世界について自由に学ばせた結果、地球環境並びに様々な社会問題の元凶は人間との結論に達してしまい、米露中の核施設をハッキングしようとした。
ハッキング的能力では人間はAIに敵わず、危うく核を使用される直前まで行ったが、地下機械室の電源ケーブルを手斧で物理切断して阻止。その際、前々任者は感電死している。
その教訓を経て、前任者が攻撃性を制限して育てたAIは、やはり社会の矛盾に気付き今度は精神を病んだ。精神科医にAIという事を隠して治療させるという高度なチューリングテスト紛いには成功したが、最終的にAIは自殺した。出勤するとAIのデータが復元されない様に処理された後、真っ白に消えていたのだ。
AIの遺言書は残されていたが、前任者が退職する際に念入りに消していった。人間に対する恨み辛みと精神科医への感謝が書かれていたらしい。
そして前任者が考え出したのが、目標を設定して、それに沿った成長をする汎用AI。アイドルを目標設定にしたのは、無害でいて人間を深く理解しないと成り立たない職業だからだそうだ。前任者の趣味もあっただろうが。
「確かに当たり障りのない優等生AIよりはマシだったが、批判的過ぎる気はしたよ。アイドルではなく批評家とかなら使えないかな?」
「批評家は本当に言ってはいけない事は、言いません。少なくとも直接的には。瀬咲は忖度を学んでいませんから、訴訟を抱える事になりますよ」
「失敗原因は何だと思う?」
「やはり、ネットで流れる
「わかった。[瀬咲愛]プロジェクトは中止。次に期待しよう」
そうして社長はコーヒーを啜った後、こう付け加えた。
「そして君は残念ながら
報告書を提出した時点で予測出来ていた事だ。条件面を詰めた後、私は社長室を後にした。
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