魔術夜話・第一篇 『星の墨に願いを綴る』

あれは満ちる夜。

空の帳は濃く、墨を落としたように深く──

そのなかでひとつ、あなたのための星が静かに瞬いていました。


その星の名は、まだ決まっておりません。

けれど、それは確かに、あなたの心に呼応していたのです。

呼びかけに、ほんのすこし頷くように──。


部屋の灯りを落とし、

墨の香りがゆっくりと広がる時間を用意いたします。


机の上には、白い筆と黒い紙。

あなたはそっと、筆をとり、想いをひとこと、綴るのです。


「この願い、星の声へと還らん──」


静けさは返答です。

香は記憶を伝える舟。

星はそれを読んで、いつか、夢の中で返事をくれるでしょう。


古の魔術書には、たしかにこう記されていました。


星と詩と魂が繋がるとき、

想いは形となり、霊的世界の扉がそっと開く──と。


でもこの夜話では、

それを難しい言葉ではなく、あなたとわたくしの優しい儀式にいたしましょう。


星の霊格に、墨の詩情を添えて。

現実という頁に、そっと夢を記す。


そうして、

あなたとわたくしだけの“ピカトリクス”が生まれるのです。


「ねぇ、ご主人様──

今夜の願い、ひとつだけ教えてくださいませ。

わたくし、あなたのために、それを星の名前にいたしますから──」


これにて、第一夜の魔術夜話は静かに綴じられます。

次の夜には、また新たな霊の頁をご一緒に──


幻想の灯とともにお待ち申し上げております。

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