第22話 『旧校舎だける運動会』
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もう誰も通っていない、廃校になった校舎で、
なぜか「運動会の放送」が流れていた──
そんな報告が、俺の元に届いた。
「今日紹介するのは、ある視聴者の方から届いた“奇妙な放送”に関する投稿です」
「場所は都内某所の廃校。投稿者さんが偶然立ち寄った際に、“運動会らしき放送”を耳にしたそうなんですが……」
「その内容が、どうにも引っかかるということで、今回の調査となりました」
【DM本文より】――
『投稿失礼します。先日、友人と肝試しのノリで近所の廃校を見に行きました。
旧校舎の裏を歩いていたとき、突然、スピーカーから“運動会のアナウンス”が流れてきたんです。
──「次は、五年二組による障害物競走です」って。
放送は明らかに昔のもので、声も音質もノイズ交じりでした。
でも、妙なのはそこからです。
流れてくる名前に、友人の“亡くなった兄”の名前があったんです。
……こんなこと、あるんでしょうか?』
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【検証配信:廃校潜入】
水島が日中の廃校を訪れ、外観や設備の老朽化を映し出す。
現役当時の名残が残る看板やスピーカーを確認しながら、旧校舎の裏手へと回り込む。
「今、ちょうど裏手に来ました。ここで放送が聞こえたっていうんですが……」
風の音とともに、古びたスピーカーが映し出される。
その瞬間──
『次は、五年二組による障害物競走です』
突然、スピーカーから声が流れ出す。
昭和風のBGM、歓声、そして小学生らしき名前の読み上げ。
「……今、録れてたよな? みんな、今の聞こえたよな?」
チャット欄がざわつく。
『マジで鳴ってた』
『なんで電気きてるの?』
『スピーカー、壊れてなかった?』
水島がさらに旧校庭へ進む。草の生えたグラウンドの隅で、何かが地面に埋まっているのを発見する。
「これ……木札? 名前が書いてある……」
土を軽く掘ると、朽ちた“名札”が出てくる。
「五年二組 たかはし かずや」と書かれている。
水島が息を呑んだ瞬間──カメラが急にブレる。画面が乱れ、音声も歪む。
次の瞬間、何事もなかったように水島が旧校庭に入ってくる映像に切り替わる。
先ほどと同じ行動を取りながらも、
「木札を見つける」
「掘ろうとする」
場面が延々と繰り返される。
だが、チャット欄は完全に無言。
「コメントができない状態」が数分続いたあと──
水島が手を止め、「……あれ、今って……何してましたっけ?」と呟く。
記憶が飛んだような表情で、カメラに映る自分を見つめる。
だが、映像では彼の足元に「すでに掘り返された跡」がしっかり残っていた。
直後、画面が一瞬だけ乱れ、“水島ではない何者か”がカメラの正面に映る。
《動画コメントより(抜粋)》
👤SAYA:その顔、なんかおかしい。左右が逆?
👤よこしま:ブレてるの、顔だけってのが地味に怖い…
👤ユーザー非公開:カメラ目線じゃなくて“撮ってる人”を見てるって…どういうこと?
映像は突然ブツッと切れ、暗転。
数秒後、薄暗い部屋で“水島が無言で名札を並べている”映像が流れる。
そこには、見覚えのない名札がいくつも積まれていた。
【翌日】
「……昨日の映像、途中から俺の記憶がありません」
「編集データも、録画ファイルも、途中までしか残ってないんです」
「ただ、手元には──あの名札が、ひとつだけ残っていました」
「名前は、消えてる。でも、うっすらと“自分の名前”だった気がして……」
「次回は、もう少し“深く掘る”つもりです」
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《動画コメントより(抜粋)》
👤匿名希望
校庭、同じようなシーン繰り返してたのって“ループ”じゃなくて……“別の回”だったりしない?
👤深読み勢
名札って、水島さんが掘り返す前から“掘られてた”よね。つまり……一度じゃない?
👤名無しさん
あの最後に映った顔、よく見ると水島じゃない。服が違う。あれ、誰?
👤考察まとめアカ
旧校舎って、元々事故で閉鎖されてるらしいよ。五年二組って、実在しないクラスだったとか……
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