悪魔の生き方

神の世の一部、悪魔界では遊技ゲームの準備が行われていた。


「天魔対戦に参加なさるのですね!さすがサマエル様!」

「サマエル様は一族の誇りです!」


使用人達が煽てていたのは一人の悪魔だった。黒い髪に赤い目、真っ黒な翼を持つ彼女はサマエルと呼ばれていた。


「ありがとう、でもまだ勝って無いから気が抜けない。」


大昔に悪魔と名付けられた種族は容赦がなく、他者を蹴落とし成り上がっていくからそう名付けられた。しかし彼女は違った。賢かったから敵を作らない生き方を選んだ。その生き方は正しかったはずだ。彼女が悪魔じゃなければ。



サマエルの親はそんな娘を憎んでいたようで普通は天使につけるエルを入れた名前にしたそうだ。


けど彼女は強かった。強かったが故に悪魔王様はサマエルの存在を認めざるを得なかった。



そんな彼女は下界に降りる準備をしていた。荷造りは彼女の使用人が終わらせていた。しかし、人間社会に降りる理由は観光じゃ無い。勝負に勝つためだ。対戦相手や審査員の情報、人間についてなど知っておくと有利な物はたくさんある。


もしも大差で負けたら一生差別を受け、下手したら処刑や追放の可能性もある。


この世界はそう言う物だ。


対戦に参加する許可を貰えるのはのは強者とされているが実際は違う。本当に大切な者は対戦には出さない。


悪魔や天使に反抗的になったり、負けて差別を受けたりしないようにするためだ。対戦に出るのは所詮捨て駒。



しかし勝てばその印象は変わる。

エルの名前を持つ彼女が普通に生きたとしたら、何かと理由をつけていつか殺されるだろう。



生き延びるためには勝つしかなかった。

いや、勝っても殺される可能性もあるのだ。


うまくやらなければ。


コンコン。扉がノックされた。その後に声をかけられた。

「サマエル様、時間です。下界に降りてください。」


さあ、遊技の始まりだ。



何がなんでも、勝たなければ。




自分のためにも、未来の誰かのためにも。



必ず……!

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