第6話:決意の芽生え
その夜、ミレーヌは薬草園にいた。月明かりの下で、薬草たちが静かに佇んでいる。
「私、本当はどうしたいのかしら」
彼女は膝を抱えて座り込んだ。父の言葉も理解できる。公爵家の令嬢としての責任も感じている。しかし、心の奥では別の声が聞こえていた。
「お嬢様」
振り返ると、クララが毛布を持って立っていた。
「風邪をひいてしまいます」
「ありがとう、クララ」
二人は並んで薬草園のベンチに座った。
「クララ、私、本当に薬草師になりたいの。でも、それは父上や家族を裏切ることになるのかしら」
「お嬢様」クララは慎重に言葉を選んだ。「私の故郷の村には、女性の薬草師がいました。彼女は結婚もせず、ただ人々を癒すことに生涯を捧げていました。村の人々は皆、彼女を尊敬していました」
「そんな人が...」
「はい。彼女は言っていました。『人には、その人にしか歩めない道がある』と」
ミレーヌの心に、小さな決意の種が芽を出し始めた。
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