第42話 コリッコ王国の疫病

コリッコ王国のトリニテイル殿下の病状は、やはり【オリフェント毒中毒症】だった。殿下の血液を採取してどの様な薬を調薬すれば良いか確認した。

「ご覧いただいたように【オリフェント毒】に侵された人の血液はどす黒く変色しています。その血液に【ブラックソーンフイッシの背びれの毒を注入すると毒が中和されてこの様にきれいな血液に戻ります。ですが人間の体内に直接【ブラックソーンフィッシュ】の毒を注入するわけにはいきません。その為に

【ナデモ草】と【コレット熱病に効くノンコレット茸】を混ぜ合わせて僕の作る聖水に入れて煮だします。水温75℃でキッチリ15分。火を止めて冷ましている間に魔力を注ぎます。この時、毒が消えますように、桃の味になりますようにと祈って30秒。薬液が透明感のある桃色になったら完成です。これを濾紙で濾してスポイトで5㏄飲ませます」


するとトリニテイル殿下が目を覚ました。

「殿下サファイヤです。分かりますか?」

「えっどうして君がここに?国に里帰りしたのではなかったか?」

「殿下はつい先ほどまでご病気で眠り続けていましたのよ」

「そうだったのかすまないね、不本意ながらコリッコに呼び戻してしまったみたいだね」

普段から仲の良いのが偲ばれる。


「お話し中申し訳ありません。体力が無くなっていると思われますのでこの体力回復ポーションをお飲みください」

「ん?君は誰だい?」

「「「アダレス王国から飛んできてくださいました【神級薬師】のテラノ様です。殿下を病からお救い下さったお方です‼」」」

サファイヤ殿下と医療長さんと薬師の長さんらしき人が声をそろえて紹介してくれた。

「そ、そうかそれはどうもありがとう]

殿下は素直に回復ポーションを飲んでくれた。


トリニテイル殿下の健康状態が問題なく良好になったので今後の方針について話し合いが持たれた。

取り敢えず城内にいる患者の治療を優先することにして僕とサッチャルが医療薬を作り治癒師たちに飲ませてもらうことにした。その際今健康な人が罹患しないように予防薬を飲んで貰った。


200人分の治療薬を作り終えたので、コリッコ王国内の患者がどのくらいいるのかを把握することを勧めた。その為に動ける人たちに予防薬と回復ポーションを飲ませて、働いて貰おう。

「この回復ポーションの効き目も素晴らしい!本当にあなたたちは【神級薬師】だったのですね王城内の病人全てが健康を取り戻しました。ありがとうございます」

と医療長。そして薬師の親方らしき人が言いにくそうに言った。

「まことに申し訳無いのですが今回の疫病の治療薬の製法をご教示下さいませんか?是非是非お願い申し上げます」


「勿論ですとも。但し神級と特級の差は簡単には埋まりませんよ。めげずに精進して下さいね」

「「覚悟の上です」」

「ところで、治療薬の素材である【コレット熱病に効くノンコレット茸】とか【ブラックソーンフィッシュ】の背びれの毒はどうやって調達するおつもりですか?」

とサッチャルが冷静に言った。

「「「そ、そうだったー【ノンコレット茸】はテラノさん専用のダンジョンでしか手に入らない幻の素材でした。それに【ブラックソーンフィッシュ】はあの山脈を超えた北の海に生息する魚だとか。とてもとても我々の手では手に入れられない物です一体どうしたら良いのか⁉」」」

そこで僕は皆さんに提案した。

「治療薬は作れなくとも予防薬は作れるでしょう。材料も手にいれられ易いものですからね。それと今回必要な素材は全て提供

しますので、来年以降の予防薬は皆さんの手で作って病人を出さないようにして下さい」

「「なんとお優しいお方だ」」


【神級薬師テラノ】の名前がコリッコ王国中に広まって神のごとく崇拝されるようになるとはこの時僕は思いもよらなかったのである




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