第39話 対抗手段

 再処理施設1階の車両通路で事故が起きた。幸い、負傷者がおらず、火事にもならなかった。



 黒いパワードスーツを着た者たちが、事故車両撤去を始めた時、アケビとブンタンはヤヅキ解体を目指して走り出した。


 現場指揮をしていたトニーチが言う。


「なんだ、あいつらは!事故処理を手伝うんじゃないのか?白いスーツは役に立たないんだな!」


 とりあえず支給された白いパワードスーツを着た者たちは、その場で脱ぎ始める。余分な黒いパワードスーツがないため、火が出ないか、いつでも消火活動出来るよう待機側に周った。



「ンハァハァ、ブンタン、急いで脱ぐよ」

「はぁぁぃ、手伝うよ~」


 ヤヅキ解体に息を切らして入ってきた二人の言動に、ヤンヌは驚いた。


「ちょっと、何を言ってるの!どこだと思ってるの!」


 ヤンヌの言葉を聞きながら、アケビは白いパワードスーツを脱ぎだし、ブンタンがその重さを支えるよう手伝った。


「ヤンヌさん、ここにはヤヅキ解体が整備したエアバイクがあるんですよ。この渡された白いこのスーツは、トニーチが手を加えている。奴らは、本気で謀略に動きやがった。ブンタン、エアバイクと"この白いの"を繋ぐから合うケーブルを用意して」

「はっはっはっ、アレ、やっちゃうんだ!」


 アケビは、白いパワードスーツをズルズルと引きずってエアバイクの近くまで運んだ。そこには、変換ソケットを差し込んだケーブルを持ったブンタンが待ち構えていた。

 その姿を見て、アケビはニヤッと笑った。


「仕事が早いね」

「アケビさんが、何考えてるのか、分かっちゃったんだよ」


 エアバイクに乗り込むと、アケビは待機状態のシステムを起こした。


「もしもーし、起きてる~?」

「待機しておりましたわ。何か御用かしら?」


「今からかね、ケーブルを差し込むから、繋がった機器にシステムを上書き出来るか、やってみてくれない?ハッキング機能は維持してるでしょ?」

「えぇ、そうですの、ハッキング機能は持ち合わせておりますわっ。それでは、繋いで頂けます?」


 アケビは、エアバイクのメーター類の横にある差込口にケーブルを差し込んだ。それを見たブンタンは、パワードスーツの背中側にある差込口に変換ソケットを差し込んだ。


 エアバイクのモニター画面には、矢印が順番に表示され、いろんな方向を差し、右を差して上を向く。システム上書きの進捗状況を表しているようだ。


「あの~、オーナー様?確認致しましたところ、対象には、そもそもの基本システムが搭載されていないようですの。上書きというより新規にシステムの書き込み作業が必要となりますわ」

「ん゛ぁっ? 書き込めるのなら、あなた好みに機器装置を最大限に活かせるよう、やっちゃって頂戴!」


「仰せのままに」


 また、モニター画面を見ると右矢印ばかりが表示され、書き込みが行なわれているようだ。


 ブンタンがアケビに言う。


「変だね」

「でしょ。仕組まれてんだよ。あの黒い姿が、このままだと施設内に多く見ることになる」


「黒いのって威圧感がすごい」

「トニーチが動かないアンドロイドシステムを復元して、パワードスーツに取り込んだ。それを新しいビジネスに持っていきたい」


 それを聞いてヤンヌが言った。


「本当に、乗っ取りに動き出したんですね。真実を皆さんに伝えたいです」


 黙って聞いていたハッサクも意見を言う。


「ワシのような古参が1階には多くいる。おかしなことをして、乗っ取ろうとしているのは頂けないな。ワシも動くか。ヤンヌさん、こっちに」


 ハッサクはヤンヌを連れ、裏口の方に行った。


 その動きをアケビとブンタンがじっと見ていると、エアバイクのモニター画面の表示が変わった。


「システムの上書きが完了致しましたわ。ただ、機能的には、着用者の動きを補助する機能が主で、システムの会話機能がございませんの。物足りないですわ。他には、通信機能がないため、遠隔操作での乗っ取りが出来ないのはイヤですの。醍醐味を失ってしまいますわっ」

「お疲れさん。本来は、作業用の装備だからね、単純機能なんだよ」


 アケビは、ケーブルを引き抜き、パワードスーツに足を突っ込み、装備を始めた。ブンタンが手伝い、頭の装備までしっかり被り、ベルトにあるスイッチを入れた。


 ヴヴヴヴヴ、プス~


 妙な音がした後、アケビの体型に合わせ、スーツが締まり、見たことある外見になった。

 アケビは四肢の曲げ伸ばしや着心地を確認すると、ブンタンが声をかける。


「アケビさ~ん、こっちの大型ハンマー持ってみて。これ10kgあるから」

「はいよ~」


 アケビは、右手で大型ハンマーを持ち上げてみた。


「お、軽い」


 ブンブン振り回すアケビ。そこへ、ハッサクとヤンヌが戻ってきた。


「わ、アケビさん、危ないわよ!」

「なんだ、もう殴り込みに行くのか?」

「いえいえ、パワードスーツのシステム確認です。ん、大丈夫そうだな。ブンタン、そっちも書き込んじゃって。現場に戻らないと」

「は~い」


 ブンタンは、先程と同様の作業を行なった。2回目なので、エアバイクシステムも、さくさくと書き込み作業を進める。順調に進んでいるが、ブンタンは、すでに足を通して、着用を始めていた。


「あのさ、もう着始めて大丈夫なの?」

「ダメな時は、アケビさんがこのスーツを引きちぎってくれるでしょ?」


「そんな脆い素材じゃないでしょ。ブンタンの体が縮んでしまうな」

「うわ~、そういう事言う。縮んだら、アケビさんに肩に乗せてもらおう」


「……このスーツ着てたら、今でも出来そうだよ」

「うん、可能。移動を楽させてもらおうかな。さて、準備出来たし、起動しよう」


 ブンタンは、そのまま仰向けに寝て、スーツに腕を通し、起動させた。ぶかぶかだったパワードスーツがブンタンの背丈にぴったりの大きさになった。

 アケビがケーブルを引き抜き、ブンタンがいろんな動きをして性能を確かめた。


「大丈夫そうだ。アケビさん、走っていこうか」

「了解。じゃ、お二方、現場に行ってきます」


 ハッサクとヤンヌが手を振り、見送った。


 エアバイクシステムから基本システムを書き込まれたパワードスーツは、見違えるほどの運動性能を見せ、アケビとブンタンの走りは息も切らさず、事故現場に辿り着けた。

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