第37話 手探り疲労
引っ掻き回されるアケビとヤンヌ。転がりまわって、事業内容が見えてこない。
その日の夕方、一旦駐車場まで行き、二人はエアバイクに乗って、ヤヅキ解体に顔を出した。
「こんにちは~、アケビがエアバイクとお客さんを連れてやって参りました~」
「は~い、中に入っちゃって~」
ハッサクの声がしたので、アケビはエアバイクに乗り、整備場に入っていった。中では、ブンタンが手招きして、指定の場所に停めた。
「お疲れ様。今日は、お客さんいるから。今から、降りる人はヤンヌさんって言うんだよ」
「こんちわ、アケビさん。ヤンヌさん、ようこそ~」
ヤンヌは、少し慌ててエアバイクから降りた。
「こ、こんにちは、ヤンヌと申します」
ヤンヌは、ハッサクとブンタンにペコペコと何度もお辞儀した。
「ヤンヌさん、落ち着いて」
「ヤンヌさんとやら、どうした、そんなに慌てて」
「最近バタバタしてて、アタシたちは、何か変なんだよ。ちょっと座ってもいいですか、すみません」
アケビがよろけて、椅子に座った。
「二人とも、クマできてるよ。すごく疲れてるんだね」
「何かあったか?」
アケビとヤンヌは顔を見合わせ、アケビがここ10日間くらいの出来事を話した。ヤンヌがゲーダの愛人だったということは濁して。
「そうか。それは大変だったね。ウチも何か協力できることがあればいいが、解体でも整備にしても、体力勝負な所がある」
「爺ちゃんが言うように、力仕事だもんね。パワードスーツ着たら、二人も出来るかもしれないね」
「アタシならともかく、ヤンヌさんは経理を専門にしてたからなぁ」
「えぇ、そうですね」
「うちがさ、経理を頼むほどの詳細なことがないんだよ」
「そうだっけ?爺ちゃん、力技でまとめて申告して、結局、税務署から怒られた じゃん」
「そうなの?」
「そうなんですか?」
「"社長"と呼べ、ブンタン。あのな~、ワシなりに精一杯やってんだぞ。コンピュータの経理ソフトを使ってなぁ」
「あれいつの?バージョン古すぎて、必要項目が足りてないって言われたでしょ」
「あらやだ」
「んふ~、ワタシの出番ではないでしょうか?バージョン違いの統合処理、
「んはっ、早速、営業かけてきたな。でもな、そんな疲れた顔して、交渉出来んじゃろ。細かい話は明日の午後にでも来てもらえんかな?」
「確かに、どこかに意識飛びそうな表情だよ、二人共」
「ヤヅキ解体だから言える。アタシは、疲労困憊です」
「仰る通り、今がいつか分からない気もします」
ハッサクとブンタンは、二人を座らせたまま、手際よくエアバイクの点検を行なった。現状問題ない、という判断だった。
その後、アケビはエアバイクで、ヤンヌは周回バスだと寝落ちして、起きられなくなりそうだったのでタクシーで帰ることにした。
「ヤンヌさん、明日の出社は、11時くらいにしませんか?おそらく、早くは起きないと思います」
「それは、正解です。ワタシは、夕飯の時間すら、睡眠にあててしまおうと考えております」
「良い夢を」
「おやすみなさい」
再処理施設近くの交差点で、そんなやりとりをして、お互い帰路についた。記憶が曖昧ながら、二人共、無事に住まいに辿り着き、宣言通り、帰宅したままの姿で深い眠りについた。
翌日、眩しい日差し。アケビは、カーテンを閉め忘れ、日差しの明るさで目が覚めた。いつもより、1時間ほど起床時間は遅いものの体が疲労により固く、背中が痛い。ベッドに座り、その姿勢のまま、ウトウトとし始める。
「ん~、シャワー浴びるか。変な匂いするし」
シャワー後、身支度をする。しかし、予定してた時間には、まだ早い。コンピュータの前に座り、あれこれと情報確認をする。久しぶりに見たが、樹脂脳核解析仲間は、何もメッセージを残していなかった。そういうものかと思い、コンピュータの電源を落とす。
結局早い時間だが、出勤してみた。まだ抜けない疲労の中、3階に上がり、レンタルオフィスに行くと、ヤンヌが出社していた。
「おはようございます、ヤンヌ社長」
「おっ……はようございます。社長って言うのは、何か違うので、呼ばないでください」
「ヤンヌ代表?」
「さん付けのままでお願いします。ところで、まだ時間に余裕がありますよ?」
「体痛くて、二度寝するのヤメました」
「ワタシも似たようなものです」
ヤンヌは、自宅から持ってきた携帯型コンピュータを操作していた。
「ハッサク社長に見せるためのものですか?」
「えぇ、画面見せた方が、分かってもらえるかなと思いまして」
「決して、契約してもらえるとは限らないけど、交渉の練習としては、いい相手かもしれませんね」
「ヤヅキ解体の方々には、不躾なお願いをしたと思っています。でも、何かのきっかけになってくれれば、と」
「ヤンヌさん、少し早めにお昼食べませんか?ブンタンの携帯電話に何時がいいか問い合わせはしますが、食べずに行くのは頭が働かないので」
「そうですね。ワタシの場合、糖分が圧倒的に足りていないのです。甘い物をくださいませ」
「それは、ご自分で選んでください。浴びるほどに、チョコや生クリームを」
「……お腹空いてきました。もう、キッチンカーって営業始めてないですか?もう行きましょうか」
ヤンヌが席を立ち、『行くぞ!』と手招きするので、アケビも少し早い昼食のため、駐車場に移動した。
すでに営業開始したキッチンカーには、まだ人は少なく、ゆっくり選べる。ヤンヌは、2種の生クリームサンドとコーヒー。アケビは、焼きうどんを頼んだ。
「ヤンヌさん、おてんばな食べ方ですね。頬までクリーム付いてますよ」
「欲してたのですよ。でも、そちらの香ばしい匂いも、たまりませんね」
「えぇ、新規店舗のようです。ん、ヤンヌさん、あの入口の方、見てください」
「入口?あれは、トニーチさんっぽい」
「あの黒いパワードスーツ着て、何してるんでしょうね。目立ってしょうがないですよ」
「多分、ゲーダさんもいるでしょうから、顔合わせたくないので、気を付けましょう」
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