第23話 いざ、システム復旧へ

 長い時間をかけたカスタムAIの複製作業がようやく完了した。


 アケビは、カスタムAIと文字で会話をした。


[複製作業、お疲れ様]

[お待たせしました]


[試しに、携帯型コンピュータを抜き差しして、侵入されないか試すけど大丈夫?]

[問題ありません]


 カスタムAI用コンピュータから携帯型コンピュータの接続配線を抜き取り、少し待ってから、また挿してみた。携帯型コンピュータの画面上には、[他装置への侵入を開始します (はい)(いいえ)]の選択表示がある。アケビは、複製カスタムAIが元となるカスタムAIに侵入出来ないことを確認するため、(はい)を選択し、ハッキングを開始させた。


 ビビーッ!


 携帯型コンピュータの画面上には、次のように表示された。


[実行できません 対象は原本データです]


 至って簡素な表示だが、アケビの指示通りカスタムAIが複製データの侵入設定変更を行なっていた。携帯型コンピュータの接続配線を抜き、正常終了させる。


 それから、またカスタムAIに文字で話しかける。


[お見事。設定変更出来ていたね]

[指示通りです]


[負荷かかったから、しばらく休憩だね]

[問題ありません]


[システム終了させるね。おやすみ]

[おやすみなさい]


 アケビは、カスタムAIのシステムを終了させ、電源を落とした。そして、キンキンに冷やしていたエアコンも電源を切った。


「んん、ちょっと飲みすぎたかな?アタシも寝よう。眠気がたまらないわ~」


 カーテンを閉め、ふらふらとベッドに沈み込み、あっという間に寝入った。


 翌朝、出勤準備の際、忘れないよう携帯型コンピュータもカバンに入れる。そのせいで通勤時も、周回バスはなるべくいている状況を選び、数本乗り過ごし、あえて乗らなかった。ようやく乗れたバスも出口近くに座り、会社内のロッカーでは、丁寧にカバンを収めた。


 その姿を見て、ヤンヌが声をかけてきた。


「おはようございます。何か、今日は慎重な動きしてませんか?」

「ぉ、おはようございます。いや~、先日、カバンの中身が割れてたんです。なので、そっと置いてみました(という小芝居をしてみる)」


「あら、おてんばですね。実はワタシも、最近、物をよく壊すんです」

「ヤンヌさんがですか?」


「えぇ、朝から言う話ではないのですが、社長の件で妙な影がありまして」

「それは、聞かないでおきます」


「別日に聞いて下さい」

「あは~、重そうなので、アタシじゃ対処できないと思います」


 朝礼が始まる時間だったので、そこそこの会話で済ませ、速やかに移動するアケビ。強めの鼻息を吹くヤンヌ。


 いつものように淡々と作業し、終業の時間。アケビは、昼休みにブンタンへ今日立ち寄ることを伝えていたので、安全を確保しながらヤヅキ解体まで移動した。


「お疲れ様です~、こんにちは~」

「はい~、お疲れです~。入ってきなよ~」


 ハッサク社長がアケビの声に応え、建物内に入るよう促した。


 いつものように、機材の間を通り抜け裏口に行くと、エアバイクが磨かれ置いてあった。


「わ、ピカピカですね。綺麗な白いボディ」

「そうだろ。元の材質がいいから、何年経っても輝きを取り戻す。しかし、動力系のシステムがなぁ」


 そこへ、ブンタンがやってきた。


「アケビさん、いらっしゃい」

「やぁ、ブンタン。お待たせしたね、例のカスタムAI、ウチの子が非常に頑張ったので複製品を持ってこれました」


「ほほぅ、ようやくシステムチェックが出来るのか」

「いいね、前に進める!」

「ただ、システムへのハッキング要素が足されたけど、コンピュータで言うドライバのようなエアバイクを認識させるもとが、しっかり当てはめられればいいんだけどね」


 ブンタンは、エアバイクのドアを開け、差込口を確認し、アケビを手招きする。


「アケビさん、ここに差し込んじゃってよ。コンピュータ用の電源は、延長コードを今、持ってくるから」

「了解。座席に準備するよ」


 アケビは、カバンから携帯型コンピュータを取り出し、エアバイクの座席に置いて、いつでも起動できるよう準備をした。

 ブンタンは、建物内から電源コードを引っ張り、エアバイクの反対側ドアを開け、アケビが挿しやすいよう設置した。


 それを確認したアケビは、電源を挿し、カスタムAIを起動させる。それから、エアバイクとつなぐ接続ケーブルを先に挿し、ハッサクとブンタンに確認を取る。


「あの~、こちらの準備は出来ました。エアバイクに接続してみますが、よろしいですか?」

「それやらないと、無理だろうからなぁ」

「いいんじゃない、やっちゃって」


「壊れるかもしれませんよ?」

「もう壊れてるよ」

「それ以上、壊れないよ」


 アケビは、必死に準備したのに、この爺と孫の素っ気ない態度を取られ、顔がひきつった。そして、接続ケーブルをエアバイクのハンドル下にある接続口に挿す。


 携帯型コンピュータの画面上に、すぐ反応があった。


[侵入可能なシステムを発見しました 侵入しますか? (はい)(いいえ)]


 選択を求めるカスタムAIの画面を確認し、アケビは(はい)を選び実行させた。


 しばらく変化がなく、アケビが要望し、ブンタンが携帯型コンピュータを冷やすために扇風機を持ってきた。しかし、屋外でも使える強力な扇風機なため、冷却能力はあるが、画面を見ているアケビの長い髪が激しくなびいいた。

 一旦離れるアケビ。近距離でも声がかき消されるので、身振り手振りで風力を弱めるよう指示し、穏やかな風で携帯型コンピュータを冷やす。


 空が少し暗くなった頃、反応がなかった画面上に進捗率が表示された。


[システム上書き 進捗率 80%]


 アケビが思わず声が出る。


「あら、早い」


 ハッサクたちが言う。


「それ、早いのかい?」

「他のシステムだと、小型記憶媒体挿し込んで1時間くらいのデータ容量みたい」


「ま~、言いたいことは分かるけど、ハッキングして、システム書き換えてんだよ。この携帯型コンピュータ作るのに約2日かかってるし、ちゃんと動いている方だよ」

「大変なんだねぇ」

「このエアバイク自体のシステムにあたる装置が不具合起こしてたら、処理速度の違いで遅さもありうる」


「なんで、否定的なことを言うのさ」

「そういうつもりはないんだが、経験上、感想がでちまうもんさ」

「いろんなパターンを考え、対処しなきゃって模索するんだよ」

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