第9話 発芽炉の門番
紫の迷宮が脈動するたび、足元が不気味にうねった。
壁からは無数の芽が芽吹き、御園たちを嘲笑うかのように蠢いている。
「気を抜くな! この艦自体が生きてるんだ!」
ケイが噴霧器の圧力を上げながら叫んだ。
その瞬間、前方の通路が大きく裂け、巨大な影が姿を現した。
——ナス
それは、巨大な翡翠ナスを中心に、複数の蔓と触手が絡みついた異形の守護者だった。
頭頂部には、ひかりが付けていたのと同じ“ナスの王冠”のような器官が光っている。
「完全にラスボス顔じゃない?」
みつばが包丁を逆手に構え、震えながらも笑う。
「いや、まだラスボスはひかりだから……でも間違ってない!」
ルカがカマを肩に担ぎ、深呼吸した。
《侵入者、排除》
ガーディアンの胴体が裂け、内部から大量の種子弾が発射される!
「くっ、散開!!」
御園は横に跳び、スコップで飛来する種子弾を打ち返す。
みつばはフライパンで弾き返し、ルカはカマで種弾を切り裂く。
だが次の瞬間、ガーディアンの蔓が生き物のように四方から襲いかかってきた。
「……来る」
御園は足元に突き刺さったツルを蹴り飛ばし、スコップを全力で振るう。
——ザシュッ!
「……“命削る一撃”——《フルディグ》」
スコップの刃がツルを断ち切り、紫の汁が噴き出した。
「よっしゃ! 効いてる!」
みつばが包丁で、一本の触手を切断する。
「ケイ、例のアレ!」
「おう!《深層除草蒸散》ヴェノム・フォグ!」
ケイが二本の噴霧器を同時に発動させ、白煙と青白い霧が混ざって放たれる。
ガーディアンの外殻がただれ、苦しげにのたうつ。
《耐性進化……開始》
「ちょ、進化すんな!!」
ルカが叫んだ瞬間、ガーディアンの表面が硬化し始めた。
しかし、ルカは一歩も退かず、カマで攻撃をし始めた。
「御園、今だ! 中央の“核”を狙って!」
「……了解」
御園は地を蹴り、一気に距離を詰める。
スコップを逆手に構え、全身の力を込めて振り下ろす。
「……“根絶の一閃”《ラストティル》ッ!」
ズガァァァァァン!!!
スコップの刃がガーディアンの核心部を貫いた。
紫の光が一気に広がり、ガーディアンが断末魔のような叫び声を上げる。
そして——爆散。
通路全体が揺れ、奥の巨大な門が開き始めた。
「やった……!」
みつばが息を吐く。
しかし、その奥から聞こえてきたのは、懐かしい声だった。
《ルカ……マダ間に合う……来ナいで……》
「ひかり……!」
ルカの顔が苦痛に歪む。
《私……発芽炉と繋がってル……ダから、ワかる……アナタ達ハ勝てナイ……》
「そんなの、やってみないと解らない!」
ルカが叫ぶ。
しかし、そのとき——艦内全体が激しく脈動した。
《発芽炉、完全覚醒開始……残り時間、二時間》
アナウンスのような声が響き渡る。
「時間がない……」
ケイが端末を確認する。
「発芽炉まで一直線だ、急げ!」
ルカはカマを握り直した。
「ひかり、絶対に——お前を取り戻す!」
アレルギーズは門の向こうへと駆け出した。
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