癒しの名を借りた淫儀
ゆうり
癒しの名を借りた淫儀
王都に近い南東の前線基地──そこに併設された魔法師団治癒部門の特別医療棟。
その奥に位置する「院長室」は、今夜もまたランプが静かな光を灯していた。
扉が静かに叩かれる音が響く。
「どうぞ」
リスティア・エルンヴァインは、手にしていた魔法陣の術式図を机の上に置き、ゆっくりと立ち上がった。
白銀のロングヘアを纏め、エメラルドの瞳をたたえたこの国随一の治療士(ヒーラー)
前線があるが故に、着ているものに華美さは全くないものの、細菌やウイルス対策も魔法で施された白い魔術衣はリスティアが考案したものだ。
ローブの裾を翻し、ヒールのない白の治癒靴が、床をすべるような音を立てて進む。
扉の向こうには、一人の若い兵士が立っていた。
若い兵士、まだ二十歳にも満たない戦場にまだ慣れていない不安げな眼差し。
初陣の直後、負傷は軽微──けれど、彼の目の奥には深い陰りがあった。
「入って。……君の名前は?」
「レオン・ファルゼン。魔導歩兵第七小隊……二等兵です、院長殿」
「そんなに固くならなくていい。ここでは、誰も命令しないし、叱りもしないわ」
リスティアは微笑みながら、部屋の奥──暖炉のそばに設えられたカウチへと彼を促した。
心を解す薄い水色のお茶をテーブルに置きながら彼のオーラを探っていく。
「……レオン、だったかしら。前線から戻って、ここに案内されたということは、外傷以外の理由があるのね?」
彼は黙ったまま、ぎゅっと拳を握る。
「あの……。下半身に……反応が、なくて。戦場から戻って以来……」
ようやく絞り出した言葉に、リスティアはゆっくりと頷く。
「なかなか女性の私には話し辛いことを話してくれてありがとう。心因性のものね。驚かなくてもいいわ。初陣の直後は、よくあることよ。――けれど、“男”にとって、それがどれほどの重みかも、私は知ってる」
レオンの視線が揺れる。
自分の弱さを、哀れみではなく理解で受け止められた瞬間──彼の肩が、わずかに崩れた。
「私は、魔法だけで癒す者ではないわ」
リスティアは立ち上がり、自身のローブの前を解く。
ローブの中に下着はつけておらず白い肌が、柔らかなランプの灯火に浮かび上がる。
衣擦れの音ですらいやらしさを感じないのは、リスティアの清廉とした雰囲気からだろうか。
豊満な美しい胸。男性の掌でも有り余るほどの胸でありながら、瑞々しく張りもある、美術品のような極上の肢体。
リスティアが呼吸をする度に、綺麗な桃色の乳首が微かに動くのが見える。
細いウエストが露わになり、臍すらも美しい。
下生えはほとんど生えておらず、秘部の縦線が見える。
「あなたが再び“男”として戻るために──必要ならば、私は、肌で癒す」
彼女の言葉は、官能ではなく、静かな祈りのように響いた。
レオンの目が、驚きと戸惑いに揺れる。
「まさか……でも、それは……」
「この国では公にできない、禁忌の術式よ。けれど、私は何度も、兵たちの“心”を取り戻してきた」
リスティアはそっと近づき、彼の手を取り、指先に魔力を通す。
──感じない。
それは、魔術師としてのリスティアにとっても、あまりに重い“沈黙”だった。
「……時間がかかるわ。でも、できる。あなたが望むなら」
レオンの瞳に、ようやく涙がにじむ。
「戻りたいんです……男として。仲間と、恋人と……生きたい。触れ合いたい……! でも、もう、自分が“壊れた”気がして……!」
その叫びに、リスティアは黙って頷き、レオンの額に口づけた。
「わかったわ。じゃあ、始めましょう──レオン。今夜、私があなたの命を、感覚ごと取り戻してあげる」
⸻
院長室の隣にある、結界を張った【治療室】
禁忌である性魔術。自身で研究、研鑽をしてきたものの、性魔術は患者だけでなく、治療士自らをも堕としかねない危険なもの。
リスティアは何重にも結界を張り、悪しきものが入らないように細心を払っていた。
暖炉の暖かい焔ですらリスティアの魔術。
燃やす薪は秘密裏に取り寄せた聖なる樹。
焔から発せられた暖かい空気は、【男】を活性化されるのを手伝ってくれる。
レオンをベッドに座らせ、裸のリスティアは躊躇のない動きで【治療】を始めた。
魔力を纏いほのかに光る指先で、レオンの首筋にそっと触れる。
その瞬間、彼の身体がわずかに震えた。
「大丈夫、怖がらないで。これは、ただの魔法じゃないわ。
あなたの命と、魂に触れるための──秘術」
彼女の手は、首筋から胸元へ。
軍服の金具を魔力で外し、布が音もなく落ちていく。
硬さを残した胸板、若さと傷の入り混じる皮膚。
そこに唇を落とした瞬間、レオンが息を呑んだ。
「っ……!」
「ここは、生きて帰った証。ちゃんと感じて、あなたがまだ“在る”ことを思い出して」
リスティアは唇と舌で、彼の皮膚を撫で、なぞり、囁くように吸う。
脇から、ゆっくりと柔らかく乳首に向けて舌でなぞっていく。外側から内側へ。
彼女の暖かい手の平は、レオンの背を上から下へなぞっていく。
そのたびに淡い治癒の光が彼の肌に溶け、魔力と快感の波が混じりあって流れていく。
レオンは、はじめて知る感覚に身を震わせていた。
痛みではなく、快でもない。
その中間で、心がほどけていく。
「……あ……」
かすかな声に、リスティアは微笑んだ。
「感じてもいいのよ。あなたの身体は、壊れてなんかいない」
次に彼女が触れたのは、臍の少し下。
指先に宿った魔力が、じわじわと熱を伴って流れ込む。
そして──
「……んっ、ぁ……!っ……!」
レオンが喉を震わせる。
機能していなかったはずの場所が、熱を帯びて応え始める。
硬く、雄々しい彼の【中心】が、服の下で少しずつ目覚め始めてきているのだ。
「すこし、痺れが取れてきたわね……」
治療し始めてから、指の先端だけでなく淡く柔らかな光を纏っているリスティアの豊かな胸が、治癒の魔紋に彩られている。
「この印は、“癒しの聖域”と呼ばれているの」
「私の身体は、触れ合うことで、傷を癒し、心を鎮め、命を灯す。
でも、代償として──私自身も、深く繋がる覚悟がいるの」
リスティアは彼の手をとり、自身の胸元に導く。
「触れて。あなたの手で……確かめて」
震える指が、彼女の肌に触れた瞬間──
レオンの瞳が、涙で滲んだ。
「……あたたかい……生きてる……」
「そうよ。あなたも、私も。ここにいるわ──今この瞬間だけは、戦も国も忘れて」
彼の手の上から、リスティアは手を重ね自身の胸を揉みしだく。
最初こそされるがままだったレオンが、自身の意思で動くまでにそう時間は掛からなかった。
リスティアの桃色の乳首を、くりくりと爪の先で撫でると、徐々に硬く勃起し始める。
「そう、レオンのしたい、ように…っ」
リスティアの声にも少しずつ色が乗ってくる。
治療の一環が故、どうしても女の部分が出てくるのはしょうがない。
喘ぎ声から発せられるエネルギーすらも、患者の治療の助けになる事をリスティアは身を持って知っていた。
「レオン…もう少しで【あなた】が戻ってくるわ…」
胸を弄られ、息が上がり始めたリスティアは自身の秘められた場所がとめどなく蜜を零しているのを自覚していた。
レオンの身体をベッドに横たえ、彼の下着を下ろす。
彼の男の象徴は硬く脈打って、腹につく位に勃ち上がっていた。
「あ…っ!」
レオンがそう言った瞬間、リスティアは彼のものを躊躇なく咥え込む。
口内で舌を使い、カリの部分を舐め回す。
咥え込んだまま尿道口から、エネルギーを注入すると、レオンの腰がびくびくと痙攣し始めた。
「すご、いです…っ…気持ち、いい……!」
恍惚とした声。リスティア自身も咥え込んだ時に飲んだ先走りの苦味から、レオンの【男】が戻って来ていることを確信した。
(さあ、仕上げをしましょう)
リスティアは彼の上に跨り、レオンを見下ろして言った。
「レオン…これであなたは戻ってこれる…」
秘められた花はすっかり解け、彼の硬い肉棒に擦り付けるたび、淫靡な音を立てる。
花の先端にある陰核も硬く立ち上がり、リスティア自身も快感を感じているのは明らかだった。
彼の肉棒に手を添え、ゆっくりと身体を落としていく。
リスティアの中がひくりひくりと彼の肉棒を迎え全てが収まり切ると、レオンは涙を流していた。
「あぁ…っ、すごいです…俺、こんな…」
リスティアは息を上げ乱れる髪を気にせずに、彼の上で乱れ踊った。
彼の胸に手を当て、乱れる中でも魂を癒す魔術を流していく。
奥深くまで彼の魂を包み込むように──。
「…ふぁ…っ、奥まで届いてる……あぁ…っ、あなたが、戻ってき…てる…っ」
リスティアの声は、祈りのように震えていた。
レオンは、感じる。
自分が今、彼女によって再び“生かされている”ことを。
柔らかでしとどに濡れた暖かな肉筒に、自分のそそり立った男の証が生きていると実感させてくれる。
ただ快感を得るだけではない。
ただ癒されるだけではない。
自分の一部を取り戻す──そういう交わり。
身体がぶつかり合い、重なり、繋がり、流れ込む魔力が彼の全身を満たすたび、
“生”が戻ってくる。
「……っ……もう……ダメ……!でる……っ」
レオンが声をあげた瞬間、リスティアの手が彼の後頭部を抱き寄せる。
「いいの…っ、全部、私の中に還して…っ」
リスティアの柔らかな尻に指をめり込ませ、彼女の奥を目指し腰を力強く振る。
白く濁った液がリスティアの深奥に満ち、
そのとき、治癒魔法の円が完成し、彼の魔力回路が再構築された。
──治療、完了。
事後、レオンは静かに涙を流していた。
「ごめんなさい……」
「謝ることなんて、なにもないわ。あなたは、よく戻ってきた。それだけで、充分」
彼女は、母のように、女神のように、そして──ただの一人の女として、彼を抱きしめていた。
治癒魔法に、性的な要素を組み込んだ魔術体系は、本来は禁術に近い。
だがリスティアはそれを、「神聖な身体魔術」として独自に研究・実践してきた。
リスティア自身の身体が彼に触れられることで、より深い“癒しの循環”が生まれていく。
──それは性交ではなく融合。
患者の心の奥に溜まった恐怖と無力感を、リスティアは静かに吸い上げる。
そして、優しく呼吸を合わせながら、その代わりに“生きたい”という命の熱を注ぎ込む。
彼女の魔力は、男を奮い立たせるためのものではなく、男を“赦す”ためにある。
──お前は、壊れていない。
──怖かっただけ。
──それでも、ここにいる。
──それで、充分。
彼が彼自身を再び愛せるように。
「……これで、あなたはまた、戦えるわ。
でも、忘れないで。戦場よりも、帰る場所を大切にしてね」
レオンは、震える声で言った。
「……あなたと、もう一度会うために、生きて帰ってきます」
夜明け。
兵士は静かに部屋を去る。
それを見送ったリスティアの背中に、後輩のヒーラーが声をかけた。
「また“院長の儀式”ですか? あの方、帰り際の顔が、まるで何かを乗り越えたようで……」
リスティアは微笑んだ。
「ただの、治癒よ。魔法と、少しの祈り」
彼女の唇は、どこか寂しげに笑っていた。
まるで、自らが“癒される側”に立つことを、どこかで諦めているように。
癒しの名を借りた淫儀 ゆうり @yuuri072188
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