第21話 開幕

『『宣誓!』』

『僕たち!』

『私たちは!』

『スポーツマンシップに乗っ取り!』

『正々堂々と戦うことを!』

『誓います!』

『誓います!』


 紅組、白組の団長の声がグラウンドに響き渡る。


『これより、第81回、一星高校体育祭を始めます』


 そのアナウンスを聞き、大きな歓声が沸き上がる。

 俺もその波に乗り、拍手をする。


 体育祭が始まった。



 ◇ ◇ ◇



 その他準備体操なのが終わり、俺たちはクラス指定の場所に座っていた。

 にしてもすごい熱狂ぶりである。

 それだけみんなが本気ということだろう。


「天野さん、今村さん、団長が呼んでるよ!」

「あ、すまん」


 報告してクラスメイトに礼を言い、その団長がいるテントのところへ向かう。おそらく実行委員の仕事だろう。

 この体育祭に向け、俺たちはさまざまな仕事をしてきたが、それは本番も同様だ。というか、本番のほうが忙しい。


 だけど、忙しいからといって嫌ではない。

 むしろ、楽しく感じていた。誰かと一緒になにかをする楽しさ。

 理解できない人はできないのかもしれないが、それでいい。自分がそう思っていられるのなら、それでいいのだ。


 そんなことを考えているうちに、団長のいるテントに着く。


「すまんな。わざわざ呼んで」

「気にしないでください、生徒会長」


 この人は俺たち紅組団長……もとい生徒会長である日比谷ひびやかえでだ。

 凛々しさを感じる目、背が高く、髪を後ろでまとめたそのストレートヘア、今は頭に赤い鉢巻をつけており、その姿は凛としている。そう、要するにこの人は凛々しいのだ。学校でも、その凛々しさから女性にも関わらず、イケメンランキングの覇者である。


 生徒会長としてのカリスマ性も強く、紅組全体の士気を向上させている。

 実行委員の仕事関係で何度か話したが、この人の安心感は半端じゃなかった。


「今回はプログラムの再確認で呼んだ。クラスをしっかり誘導してくれ」


 用事自体は大したことはなさそうだ。

 プログラムの確認も終わり、一種目目が始まる。



───【第一種目:玉入れ】───

 

 第一種目は体育祭の定番種目の玉入れ。

 だが、定番だからこそ盛り上がる。


 ここでしっかり勝つことで、いいスタートダッシュを切りたい、


 開始の合図が鳴り、カゴにどんどん玉が入っていく。

 この玉入れは学年ごとに行うので、三連勝できたら大きく差をつけられるが厳しいか。


 一年生 紅組 ✖ 0 – 1 〇 白組


 二年生 紅組 〇 1 – 1 ✖ 白組


 三年生 紅組 〇 2 – 1 ✖ 白組



 流石に三連勝無理だったようだが、リードはとれた。

 いいスタートだ。


 【合計点】紅組 100 – 50 白組



───【第二種目:短距離走】───

 

 二種目目は短距離走。

 さっそく俺が参加する競技だ。

 俺は立ち上がり、入場口まで向かう。


「あ、今村君」


 向かおうとしたその時、天野に裾を抑えられた。

 俺は首だけ回して、天野のほうを見る。


「頑張ってくださいね」


 俺はその言葉を聞き、少し笑う。

 そんなこと言われたら、頑張るしかないではないか。


「おう」


 俺はその言葉に頷きで返す。


(あいつ、天野さんに応援されてやがるぞ……)

(許せねぇ……許せねぇ!)


 うーん。後方からすごい嫉妬の声がしたが、気にしないことにしよう。

 俺は逃げるように入場口へ向かった。



 ◇ ◇ ◇



『——六着、岩田君。次は二年生の部です』


 アナウンスがかかり、俺の番になる。

 そして、スタート位置につく。


 運動はそこそこできるので、頑張りたいところだ。


 パン! と音がなり、一斉にスタートする。

 最初こそ遅れてしまったが、だんだんと加速していく。


 一人、二人を抜き、一着とのデットヒート。

 一回こそ、抜くことに成功したが、その後、相手に追い抜かれてしまった。

 そのまま、もう一回抜くことは叶わず、そのまま二着でゴールイン。


 もちろん一着が良かったが、まぁ上出来だろう。

 そして、この種目も終わり、合計点が出る。


 【合計点】紅組 160 – 130 白組


 差こそは縮まったが、まだリードを取っている。

 このままリードを取り続けたい。


 ちなみに、渡もこの競技に参加していたが、さらっと一位を取っていた。

 あいつ……なんでもできるな。



 ───【第三種目:障害物競走】───


 三種目目は障害物競走。

 ハードルやら、平均台やらいろいろある。


 この種目には萌と天野が参加している。

 合図とともにスタートし、みなゴールに向かって走り出す。

 しかし、やはり慣れない者が多いのか、思うように進めてないものが多い。


 そんな中、天野一人だけ前に抜き出す。

 その抜き出した姿を見て、周囲に歓声が沸く。

 

 自身の才能に加え、努力している姿を俺は見てきた。

 努力する天才に、誰も勝てるはずはない。


 天野は何事もなく、一位の座を勝ち取った。

 これが、聖女様の実力である。


 【合計点】紅組 250 – 190 白組


 天野の奮闘もあり、かなりの差をつけることに成功した。

 このまま順当にいけば、優勝はまちがいない。


 ちなみに萌は、障害物に引っ掛かりまくり、最下位だった。

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