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 西尾将大、葛西海斗、西村吉貴の通称ニシーズは、本人たちもそう呼ばれることを気に入っている。


 気も合ったし、全員高等学校に来てから薙刀を始めたため実力も競り合っていて、親友であると同時にライバルでもあった。


 中学校は全員バラバラだった。地元から来ているのは将大だけで、海斗も吉貴も電車を使っている。


 だから二人の過去は、彼ら自身が話したことしか知らず、高等学校に入学してからもしばらくはお互いに知らないことも多かった。


 その最たるものが海斗の病歴についてだった。


 一週間前、海斗が事故で大怪我を追った日。


 病院まで付き添った将大は、彼の母親が真っ青になって駆けつけてくるまで、待合室で祈るように手を合わせていた。


「あなた、西尾君?」


 将大は暗い顔で頷いた。海斗の母は気丈に言う。


「いつも仲良くしてくれてありがとう。海斗もすごく助かってる」


「いえ、そんな」


「本当にそうなの。海斗って、ときどき体が動かなくなることあるでしょう?」


「え?」


 海斗の母は意外そうに将大を見つめた。


「そっか、言ってなかったんだ」


「なんですか、体が動かないって」


「生まれつき脳に少しだけ病気があって、そのせいでずっと不自由をしてたの」


 将大は信じられずにかぶりを振った。


「そんな、だって、いつも普通に部活やってて、全然そんな風じゃないですよ」


「頑張ったの。リハビリも投薬も手術も。中学校の間はずっと病院で、ひとりで勉強してて。いっぱい頑張って、少しずつ良くなって、ずっとやってみたかったっていうから薙刀の部活も始めて……」


 足元がぐらついた。


 そんなこと、知らなかった。


 自分と何も変わらないと思っていた。


 ニシーズで集まっているときも、二人で話をしているときも、海斗は元気で、シャイなところがあるため大声で笑うようなことは少ないが、いつも人懐こく、はにかんでいる。


 しかし部活動になると人が変わったように大胆になり、勇猛果敢に立ち回る。


 どちらかと言えば華奢な体躯なのに、薙刀を持って睨み合うと実際以上に大きく見えて、実力は将大や吉貴に決して劣っていないどころか、その日の調子次第では完封されることもある。


 非常に努力家で、真面目で、嫌味なところもなく、誰だって海斗と五分も話をすれば好きにならずにはいられない。


 将大も海斗の真っ直ぐな強さを尊敬している。そうと口にしたことはないが、おそらく吉貴も同じ思いを持っているだろう。


 嶺浦高等学校に来て、海斗や吉貴と出会えて、同じ部活動に所属できていることを、これ以上は望めないほどの幸運だと思っている。


 それは中学生の頃に将大がずっと求めていたものでもあった。


 他愛のない話をするだけの友だちならほかにもいるが、同じものを見て、同じときに、同じ場所で切磋琢磨していけるような親友はいなかった。


 もしもそんな存在ができたなら、どれほど毎日が楽しいだろうと、夢想していた。


 それが現実になったのだ。


 ずっと欲しい、欲しいと願っていた存在を、本当に手に入れた。


 それなのに。


 それなのに、俺は。


「ずっと病院で、じっとしてたせいでね」


 と海斗の母は言った。


「手術がうまくいったら、高校では運動をやりたいって言ってたの。それで、かっこいいからって薙刀を始めて、友だちもできて……いつもうれしそうにしてるの。だからありがとう。家で西尾君の話もよく聞くよ。仲良くしてくれてるって、おかげで毎日楽しいんだって言ってるの」


 奥歯に力が入った。


 手当をしていた医師が現れ、海斗の母を呼んだ。


 待合室には将大だけが残され、いま聞かされた話を延々と頭のなかで反芻した。


 言ってくれたら、よかったのに。


 教えてくれていたら。


 そうしたら、俺は、あんなこと――

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