死合わせマッチング
和よらぎ ゆらね
第1話 死を恐れる者
わたしは、死ぬのがこわい。
電車のホームもこわいし、
信号が青に変わる瞬間もこわい。
空がきれいな朝はとくにこわい。
こんな日を失うなんて絶対にいやだと思う。
だけどある日、スマホに一通の通知が届いた。
「あなたにぴったりの死に方見つかりました」
ーー死合わせマッチング。
AIが人生のデータをもとに、最適な死に方と、最適な死後の世界を提案してくれるアプリらしい。 ダウンロード数は三千万人。評価は星4.8
レビューには「泣ける」「救われた」「もうこわくない」なんて書かれていた
ほんとうに、そんなことがあるんだろうか。
でもあのときのわたしは、とてもじゃないけど生き続ける勇気もなかった。
アプリを起動すると、やさしそうな女性のアバターが現れた。
「こんにちは、ユーザーID・444。 あなたの死をわたしと一緒に探してみませんか?」
プロフィールも入力していないのにまるでわたしを知っているみたいな声。 アバターは問いかけてきた。
「あなたは、どんな死後の世界を望みますか?」
わたしは答えた。
「痛くないところ。 誰にも忘れられない場所。 それでいて、ずっと静かな、やさしいところ。」
少し間を置いて、アバターが微笑む。
「――了解しました。 最適な死に方は、『老衰による自然死』。 推薦死後世界は、『繭の森』です。」
繭の森?
「そこは、静けさとやさしさに満ちた空間です。 あなたは巨大な繭の中で、永遠に夢を見続けることができます。 その夢の中では、あなたを想った人の記憶が波のように押し寄せてきて、 あなたを包み込み、忘れません。」
「……死ぬのが、まだこわいのに?」
「こわさを抱えたままで、いいんです。 この死に方は、“逃げてもいい”ことを肯定します。」
その言葉に、涙が出た。
何も克服しなくていい。 何も乗り越えなくていい。 ただ、生きて、そして、疲れたときにそっと横たわるように――。
死は、いずれ訪れる。 でも、それを「こわいもの」ではなく、「選べるもの」にすることで、 わたしははじめて、生きるということに希望を持てた。
「死ぬのがこわいまま、今日も生きていい。」
スマホを閉じて、わたしはベッドに潜り込む。
窓の外、夜がとても、やさしく感じられた。
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