微笑・不承不承・飛翔
葉月めまい|本格ミステリ&頭脳戦
01.卑小
雲のない青空を見上げると、いつも吐き気が込み上げる。
空に
「いいお天気だね、
私の心情を知ってか知らずか、彼女――
「そうね」
と投げやりに言葉を返して、私は机に朝食を並べていく。
料理は元々、苦手だったけれど、彼女と出会ってから少しだけ上達した。
むしろ、
私の知っている限り、料理が下手な人間というものは、四種類に分類できる。
レシピを読まない人間と、レシピを読んでも理解できない人間と、レシピを理解した上で妙な独創性を発揮したがる人間と、
まずレシピを見ようともしないし、見せても理解していないし、丁寧に教えても真似すらできないし、そのくせに隠し味だのと言って、妙な調味料を加えたがった。
だから、私が料理の腕を上達するしかなかったのである。
「美味しい。なんだか、
特に何の創意工夫も
その言葉に嬉しいと感じてしまう自分が、腹立たしい。
私にとっての「美味しい」と彼女にとっての「美味しい」の間には、果てしない断絶があると理解しているはずなのに、喜んでしまう自分が物凄く恨めしい。
「
対面の椅子に座ってぼんやりと彼女を眺めている私の姿を、ようやく不自然に思ったのか、
「食欲ない」
私はそっけなく答える。冷たく聞こえるような口調になったが、構うものかと思った。
「珍しいね。私が興味ないって言っても、色んなお店に連れていってくれたのに……、今日に限って何も食べないんだ」
こちらの瞳を覗き込むみたいに、彼女は上目遣いで私を見る。
私は目を逸らした。
どうして、私が目を逸らさなくてはいけないのだろう?
すると、
「ごめんごめん。別に意地悪のつもりじゃないよ?」
「ねえ、
小鳥の
時計の針の音が、私と彼女の
私が悪いの?
私が悪かったの?
そう
「昨日の話、……心変わり、した?」
あまりに情けない、まるで母親に
私の小さな期待が言葉になった。
「心変わりなんてしないよ。私、一度決めたことは絶対に曲げないの」
「……嘘
思わず、非難が口から
「なんで、そんなことを言うの? 私が
悲しげな眼差しを向けられて。
「……ごめん」
と私はまた、罪悪感に突き動かされた
私も、嘘
「
いつも通り、小動物のように甘えて、私の肯定を引き
最初から、わかっている。
どうせ私には、彼女の望みを断ることなんてできない。
だけど――。
「このままずっと貴方の隣にいたいよ。離れたくないよ。
私の胸に巣食う感情は空模様と同じ、汚い鼠色だった。
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