BL短歌を短編に昇華させました

一郎丸ゆう子

第1話 免許

「なんで車買ったのに免許取らないんだよ。毎回俺呼び出して」


「運転怖いんだよ。両親が事故で死んだから」


「気持ちはわかるけどさあ。単車の免許も結局取らなかったもんんな」


 嘘だよ。両親のことはとっくに吹っ切れてる。本当は助手席に乗っていたいだけ。だから、免許取ったって聞いた時、始めてバイトした時から貯めてたお金、ほとんど使ってこのミラ買っちゃったんだ。中古だけどね。


 きっと母さんが出合わせてくれたんだよね。まだ悲しみの中にいた一周忌の帰り、夕立で雨宿りしてた見ず知らずの僕をバイクで送ってくれたよね。


 あとで、なんであの時乗せてくれたのって聞いたら、死んだ母さんが好きだった花持ってたからて言ったよね。あれ、母さんが好きなカサブランカだった。


 でも、相手が男って、おっちょこちょいのお母さんらしいな。天国で舌だして笑ってる姿が目に浮かぶよ。


 もし、僕が免許取ったら、今度は助手席に乗ってくれるかな。どっちでもいいんだ。ずっと隣に座っていられるんなら。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

BL短歌を短編に昇華させました 一郎丸ゆう子 @imanemui

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ