第46話 ご褒美
スティーヴンが帰ってきたのは夜遅く、深夜だった。 魔物が暴動を起こすと言っていた午後一時、魔王様は帰宅した。
控えめなノック音の後、スティーヴンが部屋に入ってきた。
「起きていたのか」
「はい。お待ちしておりました」
まだ嫁いでいないが、食事や風呂まで使わせてもらった。更に泊まることになり、緊張や心配で眠れやしない。
「疲れただろう。早く休むといい」
「ありがとうございます。スティーヴン様も早くお休みになられてくださいね」
「俺はまだ仕事がある」
始末書等だろうか。この一件で仕事が大量に増えたのではないだろうかと心配になる。
「何か手伝えることがあれば、仰ってくださいね」
一令嬢ができることなど高が知れているが、言わなければ気が済まなかった。
「ありがとう。では少し言葉に甘えさせてもらおうか」
「はい!」
頼ってもらえるとは思わなかった。喜んでベッドから立ちあがろうとすると、それを制される。スティーヴンが横に座り、手を握った。暖かなその手が、次は頬に触れる。
「ど、どうされたのです…?」
照れてしまい、視線を下ろしていると、名を呼ばれた。視線を持ち上げるとーー口付けられる。
驚いて身を引くが、背に回された手でそれは制された。またついばむ様な口付けをされ、頭は真っ白になる。甘美なその口付けに甘えていると、軽く肩を押された。ベッドに寝転ぶ形になり、そこにスティーヴンは跨ってくる。
「スティーヴン様、待ってーー」
言葉を遮る様に、キスをされる。ドロドロに溶けてしまいそうなくらい、甘やかされる口付けが心地よい。軽いリップ音の後、唇が離れる。
「真っ赤になって、可愛いな」
そう言うとまた、口付けが降ってくる。心地良くて、抵抗できない。もうこのまま溶けてしまいそうだと思った時、唇が離れた。
「続きはまた今度だな」
そう言ったと思うと、ドアがノックされた。驚きのあまり、布団を頭から勢い良く被る。
「スティーヴ。夜中に女性の部屋に入るなど言語道断。紳士的じゃないぞ」
テオドールの声だった。
「それに寝ておられるでしょう」
どきりと胸が鳴る。きゅっと目を瞑っていると、頭に手がのった。
「嗚呼。よく眠っている」
「じゃあ邪魔してないで仕事に戻るぞ」
「わかった。すぐ行く」
仕方なさそうに息を吐き、スティーヴンの手が離れた。そのまま扉へ向かうのかと思いきや、布団を捲られ、頬に口付けられた。
「おやすみ。俺のロティー」
そう言って、離れて行く。少しだけ、ほんの少しだけ寂しいだなんて思ってしまった。
真っ赤な顔を見られない様に布団に包まる。おやすみなさい、と返事もできないくらいに、恥ずかしい。寂しいだの、心地良いだの抱いてしまった欲を自覚し、赤面するしかない。
唇に残った熱い感触を確かめる様に、指で軽くなぞった。
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