ぽんぽこ田沼

まひるのつき

第1話「やさしいおかゆと、朝のしっぽ」




ぽんぽこ田沼は、朝の光に包まれた小さなごはん屋さん。

今日も元気に、お腹ポンポンと開店の合図が響く。


森の小道をそろりと歩いてきたのは、小さなリスのミルクちゃん。

ふわふわのしっぽを揺らしながら、まだ少し眠そうな顔で扉をそっと開けた。


「おはようございます……」

小さな声でそう言うと、ミルクちゃんは椅子にちょこんと座ってぽつりとつぶやいた。

「今日は、やさしい味がたべたいな」


田沼さんはにっこり笑って、「じゃあ、あったかいおかゆだね」とお腹をポンポン。

すぐに台所へ向かった。


田沼さんはまず、白いお米を軽くひと握り、冷たい水の中でやさしくこすり洗う。

米の表面が透きとおってきたら、ざるに上げて水を切る。

鍋にたっぷりの水を注ぎ、米をそっと浮かべると、お米はゆらゆら気持ちよさそうに揺れた。


次に、人参をまるっと一本、皮ごとよく洗って、トントンと小さなサイコロに刻む。

小指の先くらいのねぎも、細かく細かくみじん切りに。


鍋に火をつけて、お米が底にくっつかないように木べらで静かにかき混ぜる。

やがて鍋から湯気がふわっと立ちのぼり、甘い香りが店いっぱいに広がっていく。


「焦がさないように、焦らずゆっくり。これが、おかゆのコツなんだよ」

田沼さんは、湯気を浴びながらぽんぽんとお腹をたたく。


米がふっくらしてきたら、人参とねぎを加えて、さらにゆっくり混ぜていく。

とろとろのおかゆの中で、人参のオレンジとねぎの緑がやさしく揺れた。


最後に、塩をひとつまみ。

それだけで、やさしい味がふんわりと広がる。


蓋をして、すこし蒸らせばできあがり。

木のお椀によそって、湯気ごと運ぶ。


ミルクちゃんは、ほわっと顔をゆるめて、にっこり笑った。

「……あったかいね。ありがとう」


ぽんぽこ田沼は、今日も誰かの朝を、そっとやさしく照らしている。

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