微分できない恋、君に証明できたなら

天野 つむぎ

プロローグー禁じられた証明

人は、言葉にできない感情を、どうやって証明するのだろう。

この心が、恋なのか、執着なのか、それともただの懐かしさなのか。

誰も教えてくれないまま、俺はまた、生徒に惹かれてしまっている。


教師という立場は、何よりも「理性」を求められる。

でも、心はそんなに器用じゃない。

言葉を教えるこの仕事が、

ときに一番、言葉を選べなくなる職業だと、俺は思う。


あの春の日、彼女が教室に現れた瞬間、

俺の中にいたはずの「教師の仮面」は、ほんのわずかに揺らいだ。


七瀬結咲。

君は、あの頃俺が好きになった生徒の、妹だった。

そして今、君に惹かれてはいけないとわかっているのに、

俺はまた、言葉にできない感情を抱えて、日々を送っている。


それでも願ってしまう。

いつか、この恋が「間違いじゃなかった」と証明できる日が来ることを。


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