平手武蔵さんの、名古屋の時空を飛び交うタイプスリップ小説「黒鉄色のケッタマシーン」の続編です。「改」ではなく「解」となっているのは、ケッタマシーンの謎が解ける、という含意があるものと思われます。
登場人物は前作と同じ、高度成長期に名古屋で育った石橋君と、そこにタイプスリップしてしまった綾菜。前作の最後に、現代に帰れるかと思った綾菜は、数年後の名古屋に舞い降りてしまいます。そこで、石橋君の「俺は名大に行く!」との言葉を思い出して。。
歴史にもて遊ばれて変わってしまった石橋君の夢、でも根っこのところの誠実さは、変わっていません。それを見抜いた綾菜がどうしてあげるのか。二人が出会ったのは誰の意思だったのか、どうなって欲しかったのか。それが最後に名古屋三越の屋上の小っちゃな観覧車で明かされます。
おそらくは作者の青春時代をモチーフにしているこの小説。名古屋の名所案内も兼ねて、読んでいてとても楽しく、そして引き込まれ、不覚にもホロリとさせられる好編です。個人的にですが、バタバタが多かった第1作よりも、恋愛と謎解きと、そして最後やるせなさが残るこの作品の方が好みです。
お読みになった方は、皆、石橋君と綾菜の前途に幸あれ、と願わずにいられないでしょう。
ヒューマンドラマがお好きな方は是非どうぞ!
黒鉄色のケッタマシーンの続編が完結しました。
前作で、続編への期待が多かったため書かれた続編だろうと思います。
前作では、55年前にタイムスリップした綾菜が、自転車屋の息子の石橋くんに逢って、当時の名古屋市を案内してもらう。そして、元の時代に戻ったと思ったら、先程の時代の3年後だった。
再び石橋くんに逢えた綾菜だが、3年たった石橋くんにはある変化が。
果たして石橋くんにどんな心境の変化があったのか、そして、綾菜の身の上にもどんな事情があるのか。
理想を追うことと現実の厳しさ、それでもやりたいことを貫くことの尊さ、そんな現代人に突きつけられた命題を改めて考えさせられる一編です。
是非読んでみてください!