2125年 最後の日本人となった105歳の女性が語る、日本滅亡百年の記憶
雪風
現中国日本自治区・東市(旧東京)にて
2125年、カリフォルニア州ロサンゼルス。
CBCニュースの特別取材班に、一本の電話が入った。
発信元は、タイ・バンコクを拠点とする「在タイ日系同盟会」。
内容はこうだ──
「最後の日本人女性への取材が可能になった」
その女性の名は、谷口あき。105歳。
──かつて東京と呼ばれた街の片隅にある老人ホームで暮らしている。
この国がまだ「日本」と呼ばれていた時代を知る、最後の生き証人だ。
私、ジョン・ウィルソンは、カメラクルーと共にタイを経由し、日系同盟会が手配したホテルで谷口さんと面会した。
取材は冒頭、中国語で進められていた。
しかし──
私が「日本」という単語を口にした瞬間、彼女の瞳が大きく開かれた。
その口から溢れたのは、驚くほど流暢な日本語。
そして、静かに語り始めた。
自らの生い立ち、そして祖国滅亡の100年間。
それは、単なる記憶ではなく、彼女にとって“生き残った者の責務”だった。
谷口さんの体調は決して良くなかった。
だから、この取材は3日間にわたって断続的に行われた。
だが、そのときの私たちはまだ知らなかった。
この証言が、世界の歴史を揺るがす意味を持つことを──
飛行機は静かに降下を始めた。
眼下に広がるのは、赤い漢字の看板で埋め尽くされた、旧・東京の街並み。
これから私たちは、この国の“終わりの始まり”を聞くことになる。
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