【1章】日だまりは、まだ名前のない気持ち⑥

晴人の心が揺らいでいた晩

澪に、一通の通知が来た


『望月さん、明日飲みに行かない?』

それはサークルで顔を合わせた男性からの誘いだった。

『ごめーん、その日バイト!』

気が乗らないとき、私はいつもこんな風にそっけなく返す。


「めんどくさー…私にはそんな気ないっての一回飲み会で話したくらいで…」


澪はため息一つして、ベッドに寝転んだ

その瞬間だった…一件の電話が鳴る


「澪ー!元気ー?」

ため息など一気に晴れる声、友人の朝霧優希(あさぎりゆうき)だった


「元気だよ何かあった?」

そこから私達は、日常的な会話を楽しんだ

学校生活の事、私生活その事、他愛のない会話で楽しんだ


「じゃあ、また大学でね~!あっ所で澪、最近中庭で一緒にお弁当食べてるのって彼氏?」

冗談まじりで優希は茶化してくる


「そんなんじゃないってば。あの人は……友達? ううん……猫、みたいな……」


そういえば私はなんで晴人くんとお弁当食べてるんだろ?別に只の友達ならそこまでしたことがないのに


猫みたいで構いたくなってしまうから?…違う、そんなものはからかうための言い訳でしかない


そう思うと私の頬は少し赤くなっていた


「わかんない…彼氏ではないよ!ただの友達!そう友達!」


私は余裕がなく咄嗟に優希に言葉を返す


「ふーん、友達ねぇ、まあそういうことにしといてあげる、今度そのお友達紹介してね~おやすみ!」


「おやすみ…」

電話が終わって、またベッドに寝転んだ


考えたことすらなかった

たまたま学食を奢ってもらって、その恩返しのためにお弁当を食べる仲になって約2ヶ月ほどだけど…


特別に話が面白いわけでもない。

見た目だってお世辞にもカッコいいとは言いがたい。

それでも、彼の隣は、どこか日向のようにあたたかくて、安心する。これではまるで私はー…


考えながらも私は寝落ちしてしまった


翌日…

「全然寝れなかった…」

「うーん、よく寝た!」

二人はまるで反対の朝を迎えた


『晴人くん、今日弁当いる?』

今日も私は後輩くんにメッセージを送ってた、これが私の朝の日課になっていた


『おはようございます、負担になってなければ入ります』


「相変わらず可愛くないなぁ…真面目というかなんというか…でも」


お世辞にも私は料理が上手くはないし、技術もない


でもあの喜んで食べている顔を見たいがためにとりあえず今日も私はお弁当を作る事にした




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