第8話 氷魔の少女と亡国の炎
早朝。ミレイナとアリシアは前線に向かっていったリュミエルの帰りを談笑しつつ馬に乗り待っていた。
「きっと、リュミエルったら、もの凄い氷の山でも出すんじゃないかしら?」
「ふふ、はい。あの子なら、眠そうなふりして本気出しそうで……逆に私たちの出番無くなるかもね」
その言葉に、ミレイナとアリシアは、お互い顔を見合わせてクスッと笑っていた。
二人とも、リュミエルという少女の鬼才っぷりを見に占めて理解していたから、まず心配はしていなかった。
昨日の昼間に、補給物資を本陣へと輸送するときに公国兵に遭遇したが、リュミエルが半壊させたともいえるし、
彼女の”氷”の魔導は人智を超えていると直感で理解していた。
「……でも、あの子、まだ幼い感じだから”違う心配”をしてしまうわ」
「たしかに、リュミエルなら『ふふん。』って顔して褒めてほしそうにするものね」
何かを優しく危惧するアリシアに、ミレイナは少し、ちゃかして返事をした
「……リュミエル、ちゃんと朝ごはん食べたかしら?」
アリシアが空を見上げる。そこには、氷の気配がまるで嘘のような、やわらかな光が差し込んでいた。
「氷で敵を凍らせても、パンは焼けないからね」
ミレイナが肩をすくめる。
「……火も使えるようになったら、最強なのに」
「やめて、もうそれ“災厄”じゃない……」
二人の笑い声が、静かに草原を撫でる風に乗った。
だが、その時――遠くの丘の向こうから、風向きが変わった。
――氷の匂いが、吹き込んできたのだ。
「……来る」
アリシアが口を閉じ、馬の手綱を引く。
ミレイナも真剣な目で前を見据える。
空気が変わった。空が青く凍て、地平が冷たく緊張し始めた。
そして、視界の向こうに――
ゆらり、と、少女が現れた。
「……ただいま」
白い吐息をまとい、銀の髪に霜を宿して、
リュミエルが、静かに歩いてくる。
その背後――西の向こうの一帯が、まるで氷の山脈のように変貌していた。
砦も、兵も、旗も、すべてが氷に閉ざされ、無音の墓標のようにそびえている。
「……どうだった?」
ミレイナが歩み寄ると、リュミエルは「ふふん」と鼻を鳴らしながらも、ちょっと眠たそうに目をこすった。
「うまくいったよ。殿下が言ってた“全部”……凍らせた」
「やっぱり……あなた、本当に、化け物みたいね」
「ん~? ほめ言葉?」
アリシアがそっと笑い、リュミエルの肩に上着をかける。
「でも、寒くはない?」
「寒くない。ボクの中、ずっと燃えてるから」
そう言って微笑んだリュミエルの目に、少女らしい年相応の疲れと、ほんの少しの誇らしさが滲んでいた。
ミレイナは、それを見て、ぽそりと呟いた。
「……あぁ、やっぱり、褒めてほしいんだね」
「ふふん♪」
彼女は満足げに笑った。
その笑みは、どんな“戦果”よりも、アリシアとミレイナの心に温かさを灯した。
***
同時刻。
クラウスも本陣に戻っていた。
公国の本陣に自身の新鋭隊を悪戯のユリウスに預けて、単独で帰ってきていた。
その事実に憤怒のヴァルガス騎士団長は、若干の文句だけで抑えていた。
なぜなら――クラウス殿下が、とても愉快そうに笑っていたからだ。
4年前に戦争が始まり、帝国は、抵抗するもむなしく蹂躙され、殿下は、御父上も御母上も兄弟で戦場へ出ていた家族は皆殺しにされ、毎日、屍のように生気を落としていたが、帝国による”報復”を決意してからというもの、
殿下の表情と声色に以前のような輝かしさが戻った……しかし、それは以前よりも冷酷で鋭く刃物のような輝きだが。
「ヴァルガス……うまくいけば、今日中に本陣が陥とせるかもですよ。」
「それは、真ですか!?……どのようにお考えに?」
「公国の本陣には今、大侯爵の子供が居るらしいよ。
それに野営地……まぁ砦には3万人しかいない。それに、
アズベル伯爵の所のリュミエルと、悪戯のディアーク侯爵が中々に削ってくれた……だから、後は”突撃”あるのみだね」
ヴァルガスは眉をしかめながらも、殿下の言葉に逆らえずにいた。
否――それは忠誠というよりも、畏怖だった。
「……ですが、殿下。突撃とは……?」
「うん、夜明けと同時に、 “黒燐隊”と“傭兵団”を一斉に放つ」
クラウスの指は、軽く地図の上にある公国本陣へ触れた。
「――つまり、 “奴らに朝を迎えさせない”ってことだよ」
その言葉に、天幕の中の空気が凍りつく。
クラウス殿下は、まるで無邪気な子供のように笑っていた。
けれどその瞳は、かつて家族をすべて喪った少年のもの――復讐の亡霊のような、燃え上がる狂気の色を宿していた。
「この四年……ずっと夢見てたんだよ」
「いつか、 “あの丘の向こう”を焼き尽くすってね」
ヴァルガスは、こくりと喉を鳴らす。
「……殿下。総攻撃の合図は?」
「 “氷が解けた時”――リュミエルの氷が、朝日で崩れ落ちるのが、合図だよ」
その瞬間、天幕の外――東の空が、わずかに白み始めた。
「……始まるね」
***
それから半刻後。
帝国本陣に集結していた総勢九万の兵が、夜明け前の闇の中で息を潜めていた。
甲冑の金属音すら押し殺すような緊張。
兵たちは、それぞれの持ち場で、指揮官の号令を待っていた。
空はまだ、夜の名残を引きずっていた。
だが東の地平が、ほんのわずかに白み始めた。
そのときだった――。
「……崩れた」
遠くを見ていたアリシアが、低く呟いた。
ミレイナが目を凝らすと、公国本陣を包囲していた巨大な氷の柱が、朝の陽に照らされて、
静かに、砕け、音を立てて崩れ落ちていくのが見えた。
氷の欠片が、太陽に照らされ、まるで銀の雨のように輝いていた。
その美しさの裏にあるのは――
帝国による復讐の狼煙だった。
「リュミエル……完璧ね」
ミレイナがそう呟いた瞬間、クラウスの号令が空を裂いた。
「――総突撃ッ!!」
それはまるで、世界が震えるような一声だった。
無数の旗が揺れ、軍馬が咆哮し、戦士たちの怒声が空を震わせる。
燃え立つ炎、矢の雨、そして突進する鉄の奔流。
帝国軍は、まるで夜そのものが形を取ったような黒い濁流となり、
公国本陣へと、一気に襲いかかっていった。
この突撃により本陣は一気に人が減り10万いた兵が6万人と少しの兵と将だけに残された。
彼らの使命は、本陣での防衛と、それぞれの”仕事”をするだけ。
程なくして、悪戯のユリウスの兵9千人と寵愛のソフィアの兵士7千を連れて哀惜のレンツは総勢3万人強で北方の民族の撃破に向かった。
アリシアとミレイナはさらに人が減ったと緊張感に包まれていた。
「ねぇ……アリシア、これ私たちの役目残っていそう?」
ミレイナの声は冷静だった。けれど、その奥底には明確な“予感”があった。
「分かりませんよ?もしかしたら、ここが奇襲されるかもしれませんし」
アリシアの答えもまた、静かだった。
「でも、今はその心配はいらなそうね」
ミレイナがそう言い切ると同時に、遠くの空が淡く朱を帯び始めた。
夜明けが、戦場にまた一つ、時の区切りをもたらす。
「……リュミエルったら、どこにいったのかしら」
アリシアは、ふと視線を空に向けた。
そのときだった。
ゴォオォ……ッ
風の流れが一瞬だけ、逆巻いた。
まるで、空気そのものが“冷気”に押し返されたように。
「――何か?来るわよ」
ミレイナの目が細くなる。
その直後、東の丘陵から、氷の山々が現れた。
いや、それは――
氷の砦だった。
丘の稜線を丸ごと包み込むように、蒼く透き通った氷が一斉に拡がっていく。
そして、その頂点に、彼女が立っていた。
氷のように蒼い髪を風に揺らし、眠たげな目で、
でもどこか誇らしげに――“ふふん”と口元を緩める少女。
リュミエルだった。
「……帰ってきたのね」
アリシアが、微笑む。
「……あれを見たら、敵も、うかつには近づけないわ」
ミレイナの声には、確かな安堵と、少しの尊敬が宿っていた。
リュミエルは、ただ、氷の上をすべるように歩きながら、二人の方へとゆっくりと戻ってくる。
その足元には、凍りついた敵兵の残骸――否。”かつての敗北”が静かに砕けていた。
「……おかえり」
二人が同時に言ったその声に、リュミエルはまた、ふふっと笑った。
「……ん。ただいま。ちょっと、凍らせすぎちゃったかも」
そう言って、リュミエルは、何でもないように腰を下ろした。
「いない、と思ったら砦作ってたのね?」
「うん、そう。すごいでしょ?」
リュミエルは、頬を軽く膨らませて、ちょっとだけ得意気に首を傾げた。
まるで、自分が描いた絵を褒めてほしいと願う少女のように。
けれどその背後には――氷の砦という、戦術と芸術の“極致”が、凛としてそびえていた。
「すごいわよ。……やりすぎなほどにね」
ミレイナは呆れたように言いながらも、その声には確かに賞賛が混じっていた。
「ふふ、まったく……あなたって、どこまでが本気なのか分かりませんね」
アリシアもまた、微笑んで肩をすくめた。
「ボクね、ちょっと思ったの」
リュミエルは、空を見上げながらぽつりと呟いた。
「 “寒さ”ってさ、人の心も凍らせることがあるでしょ? でも……逆もできると思うんだ。 “恐れ”とか“怒り”とか、そういうものを全部、氷で閉じ込めちゃえば……
少しは、誰かが穏やかになれるんじゃないかって」
その言葉に、二人はしばし沈黙した。
リュミエルの氷は、ただの攻撃じゃない。
それは彼女の内面からこぼれ落ちた、祈りにも似た願い――
「もう壊されたくない」という、少女の願いだったのかもしれない。
「……あの砦は、戦いのためのものかもしれないけど、
でもきっと、誰かを守るためのものにもなるのね」
ミレイナが、静かに言った。
「……ねえ、リュミエル」
アリシアが膝を折って、少女の目線に合わせた。
「次の砦は、私たち三人で一緒に作りましょう。今度は“帰る場所”のために」
リュミエルの目が、すっと細まり、そしてふわりと笑った。
「……うん。きっと、いいのができるよ」
***
そのころ、公国の本陣では”帝国”による逆襲に手も足も出ずに負けていた。
公国の大公爵の右腕である将軍イルゼンは、兵士や各指揮官に「防衛せよ」とだけ伝え、自身は大急ぎで自分の天幕の中……危機感のない様子でだらけている”少女”を説得している。
「……ですから、リヴェル様。どうか、私めと逃げましょう」
「嫌よ、どうせ負ける戦いだし、おとなしく大将首の娘として死ぬわ」
「いけません。そんな事をなさってしまえば、トリスタン公国は”お終い”でございます」
イルゼン将軍の顔には、もはや冷や汗が流れるどころか、滝のように滴っていた。
天幕の外では、弓の音、炎の爆ぜる音、兵たちの断末魔――あらゆる“終わり”の音が迫ってきているというのに、
その中心であるこの空間だけが、まるで時間を忘れたように静かだった。
公女リヴェル――
トリスタン大公の一人娘。
かつてはその賢さと柔らかさで「西方の賢姫」と称えられた少女だが、
現在は、どう見ても世捨て人のような態度で、絨毯に寝転びながら葡萄をつまんでいた。
「だって……逃げても、どうせ”誰か”が戦って死ぬだけでしょう?」
リヴェルは、葡萄の皮を、ぽいっと投げ捨て、
イルゼンに向かって気だるげに視線を向けた。
「それなら、公女が討たれたって『戦の幕引き』にはなるじゃない?
あとは、恨まれて、語られて、そして忘れられるだけ。
――その方が、ずっと楽よ」
その言葉に、イルゼンは震えた。
「殿下、それでは“帝国の思うつぼ”でございます!!」
声を張り上げる将軍。しかし、その声には焦燥が混じっていた。
リヴェルはそんな彼を見て、ひとつ、静かに言った。
「……ねえ、イルゼン。あなた、私に逃げてほしいんじゃなくて、
“自分が敗北を背負いたくない”だけじゃないの?」
その一言が、胸の芯を射抜いた。
「……っ、それは……!」
「……ふふ、ごめん。いじわる言っちゃったわね」
リヴェルは、葡萄の枝を手放し、ふわりと立ち上がった。
その目は、やはりどこか諦めているようで――でも、微かに揺れていた。
そう、それは決意の種火だった。
「じゃあ、逃げましょう。……でも条件があるわ」
「じょ、条件……でございますか?」
「あなたが、私の代わりに”トリスタン公国の未来”を背負うのよ」
リヴェルは、イルゼンに一歩近づき、その襟元を掴んで目を見つめた。
「私は、 “名”を捨てる。だけど、あなたが”国”を生かすの。
分かった?――これは命令よ、イルゼン将軍」
その瞬間、イルゼンの目に宿ったのは、かつて忠誠を誓った“姫”の面影だった。
あの日、自ら剣を持って民の盾になったあの少女の姿が、いま、ふたたび重なった。
「……御意。命に従い、御身を必ずやお守り申し上げます」
「それと、道中で見つかって殺されそうになったら――」
リヴェルは、微笑みながらこう言った。
「そのときは、イルゼン。あんたが私を殺して。……一思いにね?」
「もぅ、姫様……!」
イルゼンは、つい言葉を漏らしてしまい、そして頬を真っ赤に染めた。
「はいはい、照れないの。さ、逃げましょうか、護衛隊長さん」
天幕の外では、炎が夜を裂き、帝国の黒き鉄槌が打ち鳴らされていた。
その音の中、ひとつの小さな影が、静かに、夜の帳へと消えていった。
――だが、これはまだ“リヴェル”という少女の物語の、序章に過ぎなかった。
***
――――――その日、公国の本陣は、わずか”2名”を残し陥落した。
この出来事には、誰もが驚いた。
傍らから戦場を傍観していた王国も、ガナディア平原の西側各地に野営地を築いていた公国も、そして、北方で帝国の終わりなき奇襲に追われる遊牧民族も、みな驚愕していた。
しかし……帝国の若き帝は決して笑みを浮かべていなかった。
「……取り逃がしちゃいましたね。」
「申し訳ありません、殿下」
ヴァルガスは片膝を立てて頭を下げる。
「いや、大丈夫。ここからが僕の見せ場だから。」
若き”帝”、クラウス・アウグスト・ライエル・エーゼルバルド帝は、薄明の帳を背に、静かに立ち尽くしていた。
彼の目は、燃えるガナディア平原の果てを捉えたまま、ひとつも揺れていなかった。
「 “生かした”って、周りは言うかもしれないけど――」
彼は、ゆっくりと片手を振る。
「僕から見れば、ただ“焚べた”だけだよ。未来の火に。」
ヴァルガスは顔を上げた。
その言葉の意味を理解しかけて、すぐには息ができなくなる。
「……まさか、殿下……あの公女を……?」
「うん。逃がしてあげたんだよ。彼女が“燃える”場所にね。」
そう、リヴェルを捕らえ損ねたのではない。逃がしたのだ。
――意図的に。
「公国を一夜で潰しただけじゃ、誰も“絶望”してくれない。」
帝は、唇にわずかな弧を描く。
それは笑みというにはあまりに冷たく、残酷な美しさを持った“策士の印”。
「だからこそ“物語”が必要なんだ。彼女が、公国の“亡霊”になることで、敵も味方も、次の戦争に抗えなくなる。
それが僕の――“帝国の完成形”だよ。」
静かに、遠くで鳥が啼いた。
まるで、世界がその戦慄に首をすくめたようだった。
帝は続ける。
「僕がつくるのは、 “平和”じゃない。 “確約された安寧”だ。」
「……殿下」
ヴァルガスは、胸の奥がきしむのを感じていた。
だがそれと同時に、目の前の存在が“歴史の中心”であるという確信に、震えもしていた。
「さあ、彼女の影を追わせよう。
“公国の亡霊姫”が生きている限り、人々は怯え、噂し、願い、そして戦い続ける。」
帝は最後に、ふっと笑った。
「……火種はまだ小さい。でも、その業火は、いつか世界地図を描き変える。」
「残りの、僕らの仕事は簡単さ……近くの公国の野営地を強襲するだけだ……”あれ”も使えるしね」
こうして戦争2日目にして、公国は大きな痛手を受けた。
要だった本陣を喪い、公女と公国の右翼を失い、兵は散り、希望は燃え尽きた。
帝国の黒き旗は、ガナディア平原の中心に打ち立てられ、
その麓には、無数の屍と灰が折り重なっていた。
***
「あれ……?予想外ですね。あちらから来てくれるとは……」
翌朝の正午、帝国は”迎えに行こう”と思っていた”公国”が我が本陣に向けて大軍を成して進んでくる事に、きょとんとした顔で驚いていた。
「…………どうやら、敵は7万、先頭の豪勢な鎧に身を包んだのが”公国”の”大公爵……総大将”みたいです……」
憐れんだ様子で、西の空を見上げるヴァルガス。それと相対する、「くっはははは」と大爆笑をするクラウス。
3日目は、クラウスの笑い声から始まった。
「……いや~。公国ったら愚かだね。そこで攻めちゃ負けるでしょう」
ぬらりとクラウスとヴァルガスの背後に、現れた細身の青年はクスりと笑って見せる。
「ん?君は……悪戯のディアーク侯爵か。…僕もそう思うよ。」
ディアーク侯爵は、指先で傷んだ茶色の髪を弄びながら、ゆっくりと歩み出た。
その瞳には、わずかの好奇心と、確信に近い疑念が宿っていた。
「……でも、どうも引っかかるんだよね。本当に“大公爵”が指揮を執ってると思う?」
「え?」クラウスが眉をひそめる。
ヴァルガスも静かに目を細める。
「彼は本陣の壊滅を黙認し、敗戦の報せにも動じず、
そして、わずか一晩で“七万”を動かして見せた……本当に、彼にそれができると思う?」
ディアークは地図の端に指を走らせる。
「公国の貴族は臆病で、保守的で、そして何より“他人に従う”のを嫌う。
そんな彼らが、こんなにも素早く、一つに纏まると思う?」
クラウスが黙った。
「……つまり、見せかけってことか」
「そう。 “大侯爵”は飾りだ。あの鎧も、 “総大将の証”も」
ディアーク伯爵はクスりと笑う。「誰かが、背後にいる。しかも――かなり頭の切れる“誰か”がね」
ヴァルガスの喉が動く。彼の脳裏に、一人の男が浮かぶ。
「……だとすれば、”アイツ”……なのか?」
ディアークは扇子をたたみ、にっこりと笑った。
「ま、悪戯師としては、こういう筋書きのほうが燃えるけどね?」
――3日目にして各国の策略と陰謀はアリの巣のように複雑に絡み合っていく。
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