め について

@namakesaru

め について

 め。目、眼、瞳、まなこ。


 め、そのものを表す言葉で、私が知っているものは上記しかない。


 非常に、困るのである。

 皆さんは、そう思ったことは無いだろうか。


 例えば、『可愛らしいをしている』という文章でどの表現を使用するのか。


 可愛らしい目をしている。これではない。

 可愛らしい眼をしている。どちらかというと、こちらだろう。


 でも、なんだかバランスが悪いと感じてしまう。


『その男のに強い決意が宿っていた』という文章なら?


 美しさを重視すれば『瞳』だろう。しかし、ひとみではなく、まさしく物を見る器官としての、を表現したいときにどうするか。


 その男の目に強い決意が宿っていた。


 …なんか違う…。

 目、という字には力強さが感じられない。


 その男の眼に強い決意が宿っていた。


 目、よりはまし。だとは思う。けれど、という字も、なんだかアンバランスに感じてしまう。


 もっと、ふさわしい字は無いのだろうか、いつも悩んでいる。


 ちなみに、『まなこ』という表現は好きだ。

 発音したときの音が一番力強く、重々しく、さらに美しく聞こえる。


 けれど、やや古典的な表現に限られての使用になってしまうのだ、私の中では。


 現代調の文章で使用すると、『なまこ』と読み間違える気がする。実際に読み間違える。作品を書いている本人が、である。


 作者ですらそれならば、読者はどうだろうか?


 シリアスな文章で、そこで『なまこ』と読んでしまったら。


 いろいろと、台無しになってしまう。

 すべてが、そこで笑いを取るための前振りになってしまう。そうじゃないんだ。


 似たような漢字に、『口』がある。

『ロ』と、どう違うのか。ちなみに、前者が『くち』で、後者がカタカナの『ろ』である。


『食べ物になって、あなたの口にはいっていきたい』という文章を考えたとき、『口』じゃないような気がしてしまう。

『はいっていく』の部分も、ひらがなが良いのか漢字を使用して『入っていく』が良いのか、かなり悩むところだ。


 ところで、同じように顔のパーツを現す耳、鼻、眉などの字では、違和感をおぼえることはそれほど無い。


 つまり、目と口は、あまりにも原始的な象形文字であるがゆえに、単純すぎるのだ。そして、眼は眠と似た印象のため、緊張感が薄れてしまうような気がする。


 手書きだとそんなに気にならないのに、デジタルでの表現だとやたら気になってしまうという特徴もある。


 なんでこんなことに悩むかな、といつも思うけれど、私にとっては切実な問題である。


 ほかの良い表現を思いつけばよいのかもしれないが、どうしてもという音で表現したいときは、本当に手が止まってしまう。


 もうちょっと高尚な漢字も作っておいてくれたらよかったのに。


 皆さんは、そんな思いを持ったことはありませんか?

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