彼の気持ちいいとこ

@yu_karikr

第1話

 最初は酔っ払いの遊びだった。相手も俺も今思えばどうかしてたと思う。

「手、かして」

 腕を捕まれ、その先に向かうのは首だった。

「ここ、自分ではできないけどすっごく気持ちいいの」

 熱くなった顔から冷や汗が出る。

「プレイの一種だよ。わかんないなら俺が先にやろっか?」

 呆れたようにムッとした表情で押し倒される。相手の表情から恐怖と興奮が入り交じる。それが顔に出ていたのか心配される。

「怖い?」

「いいよ、やって……」

 好奇心に負け、引きつった笑顔で答える。

「じゃあ始めるよ」

 口のなかに舌をねじ込まれ、首に手を当てられる。徐々に絞まる首の感覚に意識が朦朧としてくる。

「あれ?まだそんな締めてないのになー。大丈夫?」

「ん、だ、大丈夫…。今度は俺がやるよ」

 相手の性感帯である耳を喰んで、こちらから押し倒す。

 ああ、なんだかやばいな。自分にこんな支配欲があったなんて。

「少しずつ、やるね」

 緊張しながらも、この手に相手の命がかかっていると思うと変に興奮してくる。さっきの絞められた感覚に後から気持ちよかったのだと理解する。

「こ、こ」

 と、相手は手を掴んで場所を指定してくる。すると相手は気持ちよさそうに苦しみながらも甘い声を出す。

「まさかお前がこんなのを好きだったなんてな」

 肯定するようにゴキュッと喉が鳴る。絞める手が勝手に強くなる。

 ふと下腹部に違和感を覚える。

「イきそう?脱がせようか」

手を離すと相手は横を向いてゲホゲホと咽る。

「お前、なんで、離すの。イきそうだったのに」

「最初から脱いでないお前が悪いんじゃ?」

「あーもう、やり直し。一旦トイレ行ってくる。ついでに酒も」

 というわけで仕切りなおし。トイレから戻ってきた彼は強い酒の缶を手に下げて俺に口移しをする。先程絞められた箇所を軽く撫でながら。

「お前ビビりすぎ。もっと強くしていいよ。あ、でも絞め過ぎんだよ。気持ちいいとこを見定めてくれ」

 初めてでそんな無茶言うな。とは思いつつも、相手の性感帯を探るのは嫌いじゃない。

「わーかったよ。あとその酒もう少し飲ませろ」

 もう素面のしの字もない。やれるだけやってみるさ。

 今度はソファを背に俺が跨る。いいからミスんなよ、と目で言ってくる相手にムカつきながらも笑いながら手を添える。俺もめんどくさいから下は全部脱いだ。相手の滴る液はいい興奮材料となった。

 教わった通りに弱点を責めていく。それもゆっくり、ランダムに強さを変えながら。

 相手は快感に夢中なのか、涎を垂らしながら目をつぶって集中している。たまに聴こえる苦しそうな声にも唆るようになってきた。

「……ン"ッ……ァ"ア"……ぐるじ……」

 口ではそう言いながらも下半身は凄く良い反応をしている。

「イく?」

 掠れた声だけが聞こえる。俺は手をそのまま、相手の右耳を唇で喰んだりなぞったりした。

 直後に相手はイった様子で、手を離す。あーこれ、見なくても分かる。俺の服まで濡れてるやつだ。あとでTシャツ借りよ。

 相手はカスッカスの声で、サンキュと言ってその場で横たわった。そこまでやる義理はないが、タオルを持ってきて上半身の汗と下半身のドロドロを拭う。

 ああもう、結局自分だけ気持ちよくなって寝やがって。

 次は俺が好きなプレイに付き合ってもらうからな。

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