冒険を終えた翼たちが、新たに選ぶ生の舞台。

冒頭から土下座。
まるで開演一音目にして、すべてを曝け出すような衝撃でございました──

ワシズクの老いと、コハズクの葛藤。
その語り口が、苦み走ったバラードのように胸に響きました。
冒険譚と申すより、これは家族の物語。
血と絆と誇りが複雑に絡み合い、音を立ててほどけてゆく様を、
静かに見守るしかございません。

そして、タリガとルリカの決断。
「飯屋をやろうと思ってるんですよ」──
この一言が、場面をぱっと明るく照らす光に見えました。
剣と魔法の世界から、鍋と皿の世界へ。
落差は大きくとも、その情熱は変わらず燃えております。

文章は軽やかでありながら、確かな芯が通っておりまして──
それはまるで、真夜中に聴く即興音楽のよう。
静けさの中に熱があり、読後にはしっとりとした余韻が残りました。

この物語がどのように育っていくのか、
そして新たな店にどのような人々が集うのか、
心から楽しみにしております。

これは解散の物語にあらず。
再生の物語でございます。

(序盤を読んでのレビューでした)

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