━転移先は眠くなる様な日々で、毎日退屈でした。
@pithecus
第1話「王都アレタルト」
日本の田舎よりも澄んだ風、遠くにはエメラルドグリーンの海。
年中眠くなる様な暖かさを持つ「王都アレタルト」
そこには転移者が一人居た。
俺の名前はボブ…冗談っぽく聞こえるか?。
所謂異世界転移者って奴で、
転移前の名前は忘れた、というより消えたんだと思う。
最後の記憶は転移直前の変な空間で、
個人情報は何も覚えてない。
今は転移先の城でトイレ清掃員をしている。
「…水を出す魔法とか使えたら、どんな感覚なんだろ。」
「おぉーいボブ、念願の昼食タイムだ!戻ってこぉーい」
「…あ」
このでかい声の主は卵大好きスキンマッチョの
「ドット・マクレ」、役職は清掃班長だ。
「ハァーイ!今向かいまぁ~す!」
…
今日もメインに肉が鎮座している、
思わず口角が上がる。
城内の食事は清掃員用でさえ質が高めで味も濃い、
この安定した食事こそきっと転移者特典という奴だ。
けど、こんな料理はここが指折りの安全地帯だからこそ出せる物らしい。
地図を見るとちゃんとファンタジーしてるし、新聞には毎日魔物が起こした事件について載ってる。
ギルドがあって魔法が使える世界であっても、
安全な所で労働をするのが一番なのは変わらない。
─退屈だ。
「…お前さ、早く食事に手ぇつけたら?、昼食は30分だって教わったろ。」
左の金髪男は「タンコ・ランコ」、窓掃除係の同期だ。
「すまん、ちょっと考え事をしてた」
「考え事っつ~より何か浸ってなかったか?」
「まぁお前が来てからまだ二週間だもんなぁ、
あ、れ、か、ら、な?」
お調子者のこいつは人の恥ずかしい話を度々ぶり返してくる。
アレとは転移した瞬間、気づけば裸で城前に寝そべっていた時の話。
ちなみに第一発見者はこいつだ。
「その話すんの、せめて今月中だけにしてくれよ」
「OK、今月中に一生分話すわ」
正直沢山話しかけてくれるのはめちゃくちゃ嬉しい。
何故なら今この食卓には10人程座っているが、
仲が良いのはランコとマクレ班長位だから。
「いただきます!」
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