第32話 忘れ物
玲香は住吉で乗せたお客さんを中川区松葉公園まで送った。
住吉とは栄を中心に錦、住吉、池田公園と夜の繁華街で賑わう一角である。
どちらかと言えば、集客は若い人たちが多い地区だ。
そこから、松葉公園まで送ったのだが、
どうやら、そのお客さんはスマホを車内に忘れて行ったらしい。
午前0時を過ぎている。玲香が春樹に相談をした
「春樹、今、大丈夫」
「うん、どうした?」
「お客さん、スマホを忘れて行ったの、どうしよう、
こういう場合、会社に連絡すればいいの、
それとも、配車センターに届ければいい?」
「参ったね、どちらにしても、いつまでもスマホを持っていたら、
いつ何時、お客さんの処に届けろと言われるか、わからない、
街まで戻ってきて、また、中川区まで届けに行く事になったら
仕事にならんぞ」
「だよね、どうしよう」
「そういう時はね、警察に落とし物ですって、届けるのが一番いい。
降ろした場所、覚えているか!
松葉公園の北側とか東側とかベンチに置いてあったとか、
適当でいいけど、正直に、タクシーの中に置き忘れてありました。
って言ってもいいけれど、とにかく警察に持って行くのが一番だから・・・・・
そうすれば、会社でいやな顔をされなくてすむし、
また、お客さんに届けに行く事もないし、
それ以上にお客さんが一番助かるはずだ。
明日の朝になって中川区から守山区まで、
スマホを取りに行く事になったら、お客さんが大変だ、
そうだろ、な、一石三鳥だから、会社も面倒な仕事を増やされなくてすむし
玲香だって、会社に戻るまでスマホの番をしていなくてすむし、
お客も遠い所まで取りに行かなくてすむし、ね、
これを、教えてくれたのは今年2月になくなった、
うちの代表、杉田代表って知らないか」
「えぇっ、私、杉田さんにこの会社を紹介してもらったの、
去年の11月頃だっけ、とても面倒見のいい方で、
横乗りも杉田さんだった」
「そうか、俺はその杉田代表の一番弟子だから!そんな事はいいけど、
中川警察署はわかるか、松葉公園のすぐそばだから、
八熊通りと太平通りの交差点の東側にあるから」
「うん、知ってる、今、中川警察に着いた、じゃ、届けてくる」
仕事を終えると、春樹と玲香はマツダⅡに乗って家に帰った。
「警察、スマホ 受理してくれたか?」
「なんか、すごく丁寧に対応してくれた。
会社へ持って帰ったら、きっと
『忘れ物ございませんか』って言ったのかって
責められて、始末書を書かされて、大変なのに・・・・・」
「そうだな、これからは忘れ物は何でも近くの警察に届けるのが一番」
「それはそうと、ママと修平ってどうなっているんだろ、
なんか聞いているか」
「修平さんと結婚するらしいよ、
私たちみたいに籍だけ先に入れるんだって」
「そうなんだ、修平も時間帯を昼勤務に変えたらしいし、
お父さんのお庭番をしてるって言ってたけれど、
つまり、おとうさんの監視をしているって事か、
そうか、修平は同居しているんだ。お父さんはわかっているのかな?」
「わかってる?って、精神的にどうかって事、そうだよね、
あの時も約8時間、どこにいたかも判ってないんだよね」
「ファミリーマートの向かいのバローに8時間もいたのかな?」
「でも、玲香、よく、見つけたね」
「見つけたって言うより、トイレに走ったら、そこに居たんだから・・」
「神様が引き合わせてくれたんだよ、きっと、よかった」
「じゃ、修平たちの祝宴をしなくちゃ、澤正?」
「本当に春樹、澤正が好きね。それは、ママが決めるんじゃない!」
「明日にでも電話して聞いてみる」 玲香が言った。
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