第4話花を育てよう

 さあ、自分の畑まで飛んできた訳なんだけど、既に花が植わっている。5×5で植えてある。これはあれか? 初期の金策って感じなのかね? まあ、とりあえずはこれをどうするのかだよなあ。どうすればいいんだろう? 住民に聞いてみるか。教えてくれるかどうかは解らないけど、とりあえず聞いてみよう。


「となると、住民を探さないといけない訳なんだけど、何処にいるかね? うーん。お? あそこに居るのは住民か? ちょっと行ってみるか。すみませーん。すみませーん」


「ん? 何か用かい?」


「こちら来訪者なんですけど、花の育て方が解らなくてですね。スキルで花育成は取ったんですけど、どうやって育てたら良いのか解らなくて。それと、既に植えてくれてあったものについては、どうしたらいいのかなって思っているんですが、どうしたらいいですかね?」


「来訪者? ああ、来訪者さんね。そういえば来るかもしれないって言われてたっけ。いいよいいよ。教えてあげるよ。とりあえず畑まで連れて行ってくれるかな?」


 そういう訳で、住民さんでした。快く引き受けてくれたので良かった。というか、凄いAIだな。普通の人間と話しているみたいだったんだけど。お城でもそうだったんだけど、向こうは確認がメインというか、業務連絡って感じだったからなあ。初めての住民さんだったけど、いい人で良かった。いや、妖精なんだけどさ。


「ここかい? 既に成長しきっているけど、まずは蜜を採らないとね。採らなくてもいいんだけど、勿体ないし、採るのが普通だよ。採ってみて」


「はい。解りました」


 花の中に入ると、蜜玉が3つ転がっていた。これか。これが蜜なのか。多分これで満腹度を回復させるんだな。妖精の体に対して顔くらいあるんだけど、まあ、気にしたら負けか。とりあえず、25本の花が植わっているから、それらから全部回収してしまうと。


「終わったかい? そうしたら種にするか花を採るか選ぶんだけど、花の種は残っているかな?」


「はい。家の中に置いてありました」


「うーん。それじゃあ、4つ収穫して、1つは種にしてみようかな。まずは種にする方法だけど、1つじゃ駄目なんだよね。最低でも2つは育てないといけない。ほら、これが雄しべで、こっちが雌しべなんだけど、雄しべから花粉を持って、別の花の雌しべにつけるんだよ。この時に注意してほしいのが、同じ種類の花から花粉を採らないと、別の花の種になるからね? まあ、それも有用ではあるんだけど、始めはこの5種類を育てた方がいいとは思う。慣れてきたら、花を色々と作ってみるといいよ。作り方で違う花が出来るからさ。出来ない組み合わせもあるけど、試してみるといいよ。まあ、今回は同じ色でやった方がいいとは思うね。どうせ最初級の花だし」


「解りました。やってみます」


 そういわれたので、とりあえず花粉を運んでみる。……すると、一気に花が枯れて種が3つ獲得できた。……なるほどなあ。種までは一瞬だと。それなら良いな。面倒じゃなくて。


「おおー。種が採れました!」


「種や花のステータスを見ると解ると思うんだけど、5つのステータスがあるんだよね。糖度、品質、色彩、変異度、異形度があると思うんだよ。糖度は蜜の味に関わってくるんだ。甘いかそうじゃないかって感じだね。これは0から50まであるから、出来るだけ数字の大きい方がいいよ。甘いし。0は、食べても余り美味しくないからね。0の蜜は採らないって決めてもいいかもしれないね。まあ、0には余程じゃないとならないんだけど。わざわざ糖度操作をして0にする人も居るけどね。僕はおススメしないかな。ダイエットしたい人の為の0って感じだと思うし。それと品質だね。品質は0から100まであるんだけど、品質が高い方が、薬にした時に効果が大きくなるんだよ。赤いレミルの花なら、HPポーションになるんだけど、回復量が変わってくるから、品質って大事なんだよね。買い取り価格もちょっとだけ変わるから、品質は良い方が喜ばれるよ。まあ、薬を作る人の腕にもかかってくるから、品質だけでは決まらないんだけどね。こっちは花を育てているだけだし、そこまでは気にしないって人もいるかな。後は色彩、変異度、異形度なんだけど、この3つは最初級からなら、初級になる時もあるんだ。赤いレミルの花なら、その3つが特定の数値になる時、初級のゲッテルって花になるんだよ。組み合わせは、自分で考える事。まあ、仲良くしてたら住民からも教えて貰えるかな。今は教えようって思う事もないし。初心者にそこまで教えたらね。十分だとは思う訳なんだよ。あ、数値は両方の花の数値を足すんだよ? 雄しべと雌しべの両方の数値を足して、特定の数値になれば、初級に変わるから。まあ、頑張ってみてよ。本当に困ったら、住民から教えてくれるだろうからさ」


「なるほど。そういう数値なんですか。……意外と手間がかかるんですね?」


「そりゃそうさ。僕らだって花を育てるのが仕事だしね。これで生活しているんだから、手間がかからないと困っちゃうよ。誰でも簡単に出来たら、専門で育てている人なんて要らないでしょ? こういうのは、案外手間がかかるんだよね。慣れてきたら解ってくるからさ。色々と試してみてよ」


「解りました。色々とやってみます」


「うんうん。それじゃあ他の4つも種にしてみようか。そうしたら、残りは収穫してしまおう」


 そんな訳で、花粉を運んで花から種に。……完全に虫だよね? 蜜蜂みたいな感じなんだろうなあ。妖精の立ち位置がそんな感じなんだろうとは思う。まあ、いいけど。妖精ってマジで5㎝くらいだし。小さいよなあ。その分世界が大きく見えるんだけど。というか、これ、初期にAGIにある程度振らないと、戦闘って厳しいんじゃないかな。スタミナが足りないような気がするんだけど。……まあ、全力飛行しなければ、スタミナの消費はそこまで早い訳じゃないってのが解ったのはいい事だけどな。なんだかんだと長く飛べてはいるし。


「この畑にも道具箱があったから、多分これを使えって事なんだろうとは思うけど、これが鋏。必要なのは花だけだから、ここで切ってしまって、マジックバッグの中に入れるんだよ。……流石にマジックバッグは取ったよね? 最低でも1回は容量拡大してないと、専業には出来ないけど」


「あ、それは大丈夫です。必要だと思って大きくしてます。……10までしか上げてないですけど、大丈夫ですかね?」


「Lv10もあれば十分だよ。これだけの畑なんだし、そこまで大きくしなくても大丈夫。Lv10なら、後20面くらいあっても大丈夫だよ。そのくらいの蜜と花と種は入るからさ。多分だけど、ここら辺は誰のものでもないから、お城で畑を買えると思うよ? 必要なら買ってみたらどうかな? まあ、結構広くできるとは思うし、十分にやっていけるんじゃないかな」


 良かった。マジックバッグは流石に必要だと思ってある程度はレベルを上げたからな。まあ、流石に必要だとは思うよね。


「後は、種を植えて、水をあげたら芽が出てくるから、そこから1時間くらいは放置だね。そうしたら花が育つから、また植えてって繰り返すんだよ。解った?」


「解りました。ありがとうございます」


 優しい人に出会えて良かった。こんなのチュートリアルが無ければ厳しいって。前提知識が無いと無理じゃない? 今のゲームってそう言う事になっているのかな? このゲームが特別なのか? 住民に聞かないと解らないって、今のスタンダードがこれなんだろうか?

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