第6話 再来

モンスター襲撃の報が鳴り、解放部隊の第1部隊は発生地点へと出陣した。


解放部隊の第2部隊、A部隊の中で突然闘士が暴れ出したことは、王国の闘士全員に伝えられていた。


第1部隊ももちろん、注意を怠ることはなかった。


「先日の襲撃で、第2部隊の闘士は何の前触れもなく暴れ出したと聞いている。問題が起きれば俺に伝えろ、1人も死者を出さないためにも連携を忘れるなよ!」

「了解!」


部隊長の言葉で、第1部隊は引き締められる。



モンスターの警戒地域に入り、第1部隊をA-C部隊に分け、いつも通り各部隊を10の分隊に分け行動させた。


ヴィータは、A部隊の第1分隊。


先日負傷した闘士の交代で、隊長以外の3名が補充された。


三銃士スリンガー、理解していると思うが、あいつら3名がここにいないのはお前の行動がきっかけだ。結果をしっかり受け止めろ、脳から一瞬たりとも消すなよ。」

「……了解、隊長様。」


ヴィータは不満げな顔で、第1分隊で行動する。



数分ほど経過したとき、第3分隊から通信が。


「こちら第3、虎型モンスター2体を殲滅。」

「前回遭遇した、透明のカメレオン型はいない模様。引き続き、警戒に当たります。」

「了解した、気を付けろよ。」


第3部隊と部隊長の会話が、ヴィータにも聞こえる。


「んだよ、早くストレスを発散したいってのに、こっちには獲物が無しかよ。」

「それっていい事じゃないか?僕達解放部隊は、国を発展させるために存在している。それを邪魔するモンスター達が少ないなら、国もより早く発展することが出来る。」

「あっ?それじゃあつまらねえよ。何のために嫌な修行を終えて、解放部隊に入ったと思ってる。」

「何か理由があるのかい?」

「それは……。」


ヴィータの顔には、眩しいほどの笑顔で振り向く、ロゼの姿が。


(ロゼ、俺はお前とこの世界でいきたい。自由に、楽しく。もう、

「大したことじゃない。それより、本当にモンスターいねえじゃねえか、つまらねえ。」


ヴィータが吐き捨てるように言うと、


「こちら本部!先日遭遇したカメレオン型モンスターの熱源を検知、1番近いのは第2分隊です、お気をつけて!」

「第2分隊って、俺らの近くじゃねえか?おい、隊長!」

「戦いに行かせろとでも言うんだろ、却下だ。俺たちはこの先100mまでの警戒を継続する。」

「そんなこと言って、第2分隊がこの前の暴れる症状に襲われたらどうする?全滅するぞ。」


ヴィータの発言に、隊長も一瞬考える。



そして、


「そうだな、三銃士スリンガーの意見を採用する。第1分隊、第2分隊の援護に回るぞ!」

「了解!」

「そうこなくっちゃな!」


ヴィータの意見が通り、第1分隊は第2分隊の元へ向かう。


その道中、隊長がヴィータに近づき、


「今回のはいい提案だった、謹慎の効果か?」

「あっ?俺は俺だ、それをあんたがいいと思っただけだろ。」

「そうか、なら毎回俺にいいと思わせる行動をしてみせろ、そうすればお前はもっと高みにいける。」

「んだそれ?まあいい、早くやり合いたいんだ、急ぐぞ。」



少し、ヴィータは第1分隊で認められつつあった。




そして、第1分隊が援護に駆けつけた頃、


「どこにいやがる!カメレオンやろう!」


ヴィータが双棍を構え、先頭に躍り出る。


だが、


「何だよこれ。」

三銃士スリンガー!前に出過ぎだ……っ!?」


第1分隊の目に映ったのは、



全身に切り傷と弾痕があるカメレオン型2体の死体。


さらに、


「っ!?第2分隊!」


カメレオン型から10mほど離れた場所に、5人の闘士が倒れている。


全員深い傷を受け、重傷の状態だった。


「くそっ、第2分隊の応急処置を!三銃士スリンガー、お前は周りの警戒を頼む。」

「言われなくても!」


ヴィータは警戒を怠らず、周りを見渡す。



しかし、周りに変わった雰囲気は何一つない。


(何だ、何でどちらも傷ついて、モンスターは死んでる?第2分隊も5人が重傷、それにカメレオンについた傷は本当に第2部隊のものか?)


疑問に思いながら辺りを警戒するヴィータに向け、



「うぁぁ!!」

「退避!退避!」

「っ!?何だ、第1分隊?」


警戒のために離れていたヴィータが、悲鳴の先に全速力で戻る。



そこには、


「た、助け、てーー。」


地面に伏せ、助けを求める闘士が蹴り飛ばされ木に叩きつけられる。


そこにいたのは、


全身銀色で覆われ、手には銃を持ち二足歩行する物体。

髪はなく、動きは滑らかだが人とは違う。

機械が軋む音と共に、その細い体からは想像できないプレッシャーと魔力を感じる。

顔はグレイ型、人の言葉を話さず口は開いたまま。




そう、レイダーα型が現れた。




「こいつって、2年前に全部壊れたはずじゃーー。」

「っ!!」


ヴィータを視認したα型は、銃の先についた剣で襲いかかる。


反応が間に合ったヴィータは、双棍でギリギリ受け止める。


「こいつっ、早いなんてもんじゃねえ。まさか、モンスターも闘士もやったのは、お前か!?」

「……。」


ヴィータのレイダーとの初戦、始まりのゴングが響いたのだった。

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