集合写真

高校の卒業式のあと、クラス全員で撮った集合写真を、グループLINEに送った。


みんなが「いい写真!」とか「懐かしいメンバー!」って盛り上がってて、

俺もスマホでその写真をじっくり見返していた。


やっぱり最後って感じがして、ちょっと泣きそうになった。


でも、なんか、変だと思った。


前列中央の女子――確か、欠席してたはずなのに、写ってる。


顔を拡大してみたけど、確かに彼女だった。制服も一緒。笑ってる。

でも、目だけは笑ってなかった。


(……でも、もしかしたら途中から来たのかも?)


そう思って他のやつに聞いてみた。


「なあ、この写真に写ってる○○ってさ、今日来てた?」


「は? 誰のこと?」


「ほら、前列の中央の……」


俺が写真を見せると、そいつは黙った。


そして、しばらくしてから、こう言った。


「……お前、何見てんの?」


「は?」


「その写真、前列、空いてるぞ? 誰もいないよ?」


そう言われて、もう一度見返す。

でもやっぱり、そこには彼女が写ってる。


心配になって、写真を保存して別のアプリで開いてみた。

加工か何かかと思って。


でも、どのアプリでも――彼女は、ちゃんと写ってる。


後日、印刷してみた。


プリントされた写真にも、彼女はいた。笑っていた。ずっと、こちらを見て。


俺は怖くなって、実家にある卒業アルバムを取り寄せた。

最後のページに、集合写真が載っていた。


そこにも……彼女は、写っていた。


俺のすぐ隣に。


その瞬間、気づいた。


俺が彼女のことを「欠席していた」と思っていたのは、なぜだったんだろう。

そもそも、彼女って……本当に、誰だった?


思い返してみても、彼女の“名前”が思い出せない。


でも、写真の中では、確かにずっと――俺の隣にいる。







《意味がわかると怖いポイント》

• 最初は「欠席してたはずの女子が写ってる」という違和感だけ。

• だんだん、周囲の人には見えていない存在が、なぜか主人公には見えていることが明らかに。

• さらに恐ろしいのは、「彼女の名前も記憶も、なぜか存在しない」のに、写真の中では“自然に”写っているという矛盾。

• 主人公はすでに何らかの“つながり”を持ってしまっており、彼女は今も隣にいるという暗示。

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