復興事業が軌道に乗り、各地で平和と繁栄が実現された頃、新たな脅威が現れた。

「セレスティア様、緊急事態です」

ダミアンが青ざめた表情で駆け込んできた。

「私の国で政変が起こりました。軍部が父を幽閉し、戦争の準備を始めています」

セレスティアは衝撃を受けた。

「なぜ今になって？」

「復興事業の成功を快く思わない勢力がいるのです。平和は軍部の影響力を削ぐと考えているようです」

これは深刻な事態だった。ブラックソーン王国の軍部が再び戦争を起こそうとしているのだ。

「私たちがこれまで築いてきた平和が、台無しになってしまいます」

エリーザが不安そうに言った。

「それは阻止しなければなりません」

セレスティアは決意を固めた。

「ダミアン、詳しい状況を教えてください」

ダミアンは軍部の動向を詳しく説明した。クーデターを起こした将軍は、隣国への侵攻を計画していた。その理由は、復興事業によって他国が力をつけることへの恐れだった。

「彼らは平和を脅威と見なしているのです」

ダミアンは悔しそうに言った。

「何と愚かな考えでしょう」

セレスティアは怒りを覚えた。

「戦争が何も生み出さないことを、彼らは理解していないのですか」

「軍部は力による支配しか理解しません。しかし、私たちには別の選択肢があります」

マルクスが提案した。

「外交による解決です」

「外交？」

「はい。各国の指導者と連携し、経済制裁や国際的な圧力によって、軍部の暴走を止めるのです」

これは現実的な提案だった。セレスティアたちは、これまで支援した各国の指導者と連絡を取り、協力を求めた。

しかし、事態はさらに複雑になった。

「セレスティア様、困ったことになりました」

エリーザが深刻な表情で報告した。

「軍部は、あなたの能力を脅威と見なしています。あなたを排除しようとしているようです」

セレスティアは覚悟を決めた。

「私が標的になるなら、それも受け入れます。しかし、多くの人々を巻き込むわけにはいきません」

「セレスティア様、何を言っているのですか」

マルクスが反対した。

「私たちは仲間です。あなたを一人で戦わせるわけにはいきません」

「そうです」

ダミアンも同意した。

「これは私の国の問題でもあります。私にも責任があります」

セレスティアは仲間たちの絆を実感した。彼らは単なる協力者ではなく、真の友人になっていた。

「分かりました。では、みんなで解決策を考えましょう」

四人は戦略を練り始めた。軍事的な対抗は避け、平和的な解決を目指す。しかし、相手は武力を用いる可能性が高い。

「私たちの最大の武器は、人々の支持です」

セレスティアが言った。

「各国の国民が平和を望んでいることを、明確に示す必要があります」

「それは素晴らしいアイデアです」

エリーザが賛成した。

「平和の集会を開催し、国際的な連帯を示しましょう」

こうして、史上最大の平和集会が企画された。各国の復興を支援された人々が、一堂に会して平和への願いを表明する。

準備には一ヶ月かかった。しかし、その甲斐あって、十万人を超える人々が集まった。

セレスティアは壇上に立ち、演説を行った。

「皆さん、私たちは戦争の痛みを知っています。そして、平和の尊さも知っています。今、再び戦争の脅威が迫っています。しかし、私たちは決して屈服しません。平和への信念を、世界に示しましょう」

会場は感動的な拍手に包まれた。各国の代表も、平和への決意を表明した。

この集会は世界中に報道され、大きな反響を呼んだ。ブラックソーン王国内でも、多くの国民が軍部の政策に反対し始めた。

「効果は出ています」

ダミアンが報告した。

「国内で反軍部の運動が広がっています。父も軍部の監視が緩くなったと言っています」

しかし、軍部も黙ってはいなかった。

「彼らは武力行使を決定しました」

ダミアンが緊急報告をした。

「明日の夜明けに、アルテミス公爵領への攻撃を開始するようです」

セレスティアは決断を迫られた。戦うか、逃げるか。しかし、彼女の答えは明確だった。

「私たちは戦います。しかし、武器ではなく、信念で戦います」