僕なりの宿題の答え
あれから数日経った頃……、レオナは出産予定日が近付いていたため、ブランシュレディースクリニックと言う産婦人科に入院していた。
そして、僕はと言うと先日ルミナが言っていた事が頭から離れず、夜だと言うのに中々眠れないでいた。
種族の違い……確かにそれはあるだろう。
エルフ達から見れば人間や獣人族は短命種であり、また反対に人間や獣人から見ればエルフは数世紀もの時を生きる長命種……。
どうあがいたところでそれは変わらない。
仮にもし本当にリィナがリュカくんと付き合い、結婚まで行ったとしよう……、そうなると一人年老いていくリィナに対してリュカくんは変わらず若いまま……。
果たしてリィナはその事実に耐えれるのか、また逆にリュカくんはリィナが先にいなくなるという事実を受け止められるのだろうか……?
「むにゃ……、リュカくん……またあそぼうね……」
僕はリュカくんと遊んでいる夢をみているのだろう、楽しげな寝言を言ってるリィナへと目をやる。
ルミナは僕にしか答えを出せないと言っていた。
「……わからないな」
どれだけ考えても答えは出ない……。
もし……もし仮にレオナではなく、ルミナと結婚していたら……同じような問題がリィナではなく、僕へと降りかかるということになっていただろう。
もし、リィナではなく僕自身だったらどう答えを出す……?
ルミナよりも先に年老いてやがては消えていく僕と若い姿のまま取り残されるルミナ……。
僕は年老いていく自分と、若いままのルミナを見たとき……どう思う……?
また、ルミナはどう感じる……?
僕はきっと愛する者を残して消えゆく寂しさを感じるかもしれない、反対にルミナは自分だけが愛する者を失い、悠久の時を生きなければならないと言う悲しさを胸に抱いくのかもしれない、そして僕はその悲しさをルミナに背をわせるということになる……。
ならばいっそ、結ばれずに別れたほうがお互いのため……そう言うことになるのだろう。
そうか……これがルミナの言っていた長命種と短命種の悲恋なのか……。
なら、もしリィナとリュカくんが僕に対して結婚したいと言い出したとき……僕は何と言う……?
無理矢理にでも仲を引き裂く……?
いや、それは違うはずだ。
何か……何か別に答えがあるはず……。
別れずとも、同じ時を生きることが出来なくても……お互いが幸せになれる方法が何か……!
その時ふと僕は再びリィナの顔を見る。
その時全てが分かった……!
(そうか……!そう言う事か……!)
簡単なことだったんだ……!
どんなに愛し合っていたとしても時の壁は越えられない……しかし……その想いは託せるはず。
もし……もし僕がルミナと結婚したら僕は必ずルミナとの間に子供を作ると思う。
そしてその子供はハーフエルフとして生まれ、人間の僕よりははるかに長く生きられるはず。
流石にエルフとどちらが長命かと言われれば分からないけど、僕の願いは……祈りは子供に託せる……。
ルミナのそばにずっとではないにしても、出来るだけでいいからいてあげで欲しいと僕の願いを伝えられる。
もし……リィナがリュカくんと結婚したいと言ったとき……、僕はこう言うだろう……、「二人の愛の結晶を残しなさい、一人でも多く残しなさい」と……。
それがきっとリィナの祈りに……そしてリュカくんはリィナを愛したと言う確かな証拠として残るはず……。
ルミナ……分かったよ。
キミの言っていた宿題の答えが……。
合っているかどうかは分からないけど……僕なりに答えを見つけたよ……。
そして、ちょうどその答えを出して空が明るくなり始めた頃……ブランシュレディースクリニックから出産が近いと言う電話が掛かってきたのだった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます