第4話 大晦日の夜
これは
実際に
私が見た
夢です。
大晦日の夜。
私は布団に入り、眠りに就きました。
私の記憶に残っているのは、
真っ白な何も無い空間に、私が座っていました。
突然、何かが背後から私に抱きついてきました。
その何かは無言で、右手の人差し指で、私の右頬をツンツンしてきます。
私は誰だろう? と思い、抱きつかれたまま後ろを振り向きます。
見えたのは、全身、黒ずくめで、頭に黒いフードを被っていました。
ですが、顔が見えません。
いえ、フードの中には、頭部が無かったのです。
私は、それが死神だと認知しました。
しかし、恐怖は有りません。
むしろ、懐かしい旧友に再会したような感覚でした。
その死神は数分、私に抱き着いたまま、
私の体をゆっくり左右に揺らします。
私は、懐かしさと心地よさで包まれ、
しばらく死神に身を委ねていました。
目が覚めました。朝でした。
初夢は、1月1日の夜に見る夢の事です。
大晦日の夢は、何と言うのでしょうか?
私の母は2週間後に、天に上りました。
私の見た、あの死神の夢は、「母親を迎えに来るぞ」
という予告だったのでしょうか?
土地神様の多くは、産土神 ( うぶすなかみ ) です。子授けの神です。
その一方で、死神でも有ります。
西洋の死神と聞くと、悪魔・サターンの手下で、
有無を言わせず命を奪う恐ろしい存在。
ですが日本の死神は、寿命を迎えた者の魂を迎え入れ、
天界へ送り届ける役割を担っています。
死神とは、死を司る神 なのです。
仏教で言うなら、阿弥陀如来や地蔵菩薩です。
天に上った魂は、しばし休息し、浄化され、
次の人生課題を決め、再び生まれ変わると言います。
新しい肉体に魂を送り込むのが産土神ですから、
私たちは1回の人生で、2度会うことになります。
1度目は、生まれる前の産土神として。
2度目は、人生を終えた時の死神として。
私は、夢に死神が現れた事が、内心、良かったと思っています。
それは母の魂が天に登る時、迷わないように、
ちゃんと迎えに来てくれた と、感じているからです。
完
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