第31話 15日目(3)

 そこからどうやらサーバーがある場所に移動したか、遠隔操作によって、その空間が1人ずつ分けられ、3人ずつの警察の人がアバターでやって来た。そのまま事情聴取を受けたが、まぁこちらは被害者なので。この2週間のあれこれのデータを提示したら、帰っていいよ(意訳)と言われた。

 その際に、また後で話を聞くかもしれないから色々なデータは消さないでね(意訳)とも言われたが、それはまぁ当然だな。下手に触って証拠隠滅になってしまったら色々な方向で困るから。もちろん消すつもりは無いし、何ならバックアップを増やすつもりだ。

 そしてようやく自分の家というかホームとなる仮想現実の空間に戻ってきて、そこでログアウト。ログアウトした時の状況は変わらないんだが、何と言うか、ようやく一息つける。


「……まぁここから改めての謝罪と事情説明と迷惑料で割引したお仕事を全力でこなさないといけないんだが」


 ほんっとにやらかしてくれた、としか言いようがない訳だが、その前にまず、あの「世界」に移動する直前のシステムログの走査だ。補助AIに既に指示を出していたが、その上で自分でもシステムをチェックしていく。

 何をしているかというと、あの「世界」に放り込まれる事になった原因だな。間違いなくウィルスだと思うんだが、感染経路を確定しておかないといけないし、ウィルス自体も見つけて消しておかないと何が起こるか分からない。後はウィルスに対応するようにファイアウォールをアップデートする必要もある。

 幸いに、と言うべきか、ウィルス自体はすぐに見つかって排除、隔離する事が出来た。その解析とファイアウォールのアップデートは補助AIに丸投げして、感染経路の特定に集中した結果。


「…………ほーん?」


 あの「世界」に移動させられる直前に受けていた仕事で、実質的にテストプレイヤーとして動く事になった「世界」が原因らしい、という事が分かった。何故ならあの「世界」にログインする為の、専用アバターを作って基本アバターに紐付ける部分にウィルスが混ざっていたからだ。

 そしてそういう構造をしている以上、あの時テストプレイヤーとして参加していた全員が被害に遭っているだろう。なおかつあの「世界」は、最初からそういう目的で構築されたという事でもある。つまりはあのば……無知な5人を唆し「利用」した奴である可能性が高い。

 もちろん即行で、さっき聞いたばかりの警察の連絡先と、先に連絡しておいた知り合いにその情報をメールする。警察の方は反応が無かったが、知り合いの反応は早かった。


「え、あれ高校生だったの? しかもドッジボール部所属で、部活の為に初めて仮想現実を触ったレベル……? それが何で仮想現実を構築する側に、って、あー……顧問が真っ黒だったパターンかー……」


 なお仮想現実は、その中で動いたのと同じだけの運動を身体に反映する。そして今この場所は地下なのだから空間には限界があり、室内競技であっても普段の練習は仮想現実で、というのはよくある事だ。部活ならなおさらだな。

 仮想現実でなくても運動は出来るし、そもそも仮想現実を使えるようになるのは16歳からだ。正確には第二次性徴が終わってからだな。それまでに仮想現実に過剰に触れると、ホルモンバランスが狂う可能性があるらしい。

 だから今の世代だと、高校に入って初めて仮想現実に触れる、という人間が大半だろう。部活で必要だからという入口から仮想現実に誘って、そのまま詳しい事を教えずに闇の方向に引きずり込む。教師の中に、そんなダメを通り越して論外な奴が混ざっていたようだ。


「しかしこの短時間でよくここまで調べたな」


 出てきた感想がそれだったのは、まぁ、うん。しかし随分こう慣れてない感じだと思ったら、あの5人高校生か。しかも騙した相手は顧問。あぁうん、それはどうにもならんわ。自衛とかそんなレベルではない。騙されなかった方が偉いやつだ。

 ……とりあえず、あの請求書の請求先は、その顧問に変えておこう。利用されただけの未成年にあの金額を請求する程鬼になったつもりも無ければ金銭的に困っている訳でもない。一応警察にも請求書について説明していたから、請求先の変更も一応相談しておけば大丈夫だろう。

 にしてもあの、ゲーム的なバランス感覚の壊滅さに対する感想は撤回しないが。あいつらはゲームを作ったらダメな人間だ。出来れば料理もやめた方がいい。基本を無視していじりまくる上に自分で確認しないのは、唆されたとは言え大惨事にしかならない。


「ま、そこまで教えてやる義理も無ければその方法も無いんだが」


 しかし、仮にもしっかり資格を持った教師が、顧問として担当している部活に入った生徒を騙すかよ。クズとしか言いようのない人間は割といるもんだな。

 後は、私で6人目、と言っていたから、5人はアバターロストからのデータ盗難に遭っている筈だ。そっちの被害が最小限で抑えられる事を祈っておこう。

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地中で絶海の孤島に遭難する話 竜野マナ @rhk57

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