第11話 6日目(日中)

 今度こそは、夜と共に嵐も去っていったらしい。うだるようなというかむしろ焼肉的な意味で焼けそうな日の光が遮るもののない海と海辺を蹂躙していた。なお拠点を作るために森を多少とは言え切り開いた為、小屋がある周辺もダメージ判定が発生しそうな日光が降り注いでいる。

 ギリギリ一応屋根があるから直接日が当たっている訳ではないとはいえ、急上昇する気温に恐らく体力は奪われ続けている。これは確かに地面の下に避難したくもなる、と、ちょっと現実の状況に納得した。何せ、これの何倍も酷い事になってる筈だからな。

 さて近くの島に行く訳でもなく、ここで何をしているかというと。


「まさか本気で2体目が飛んでくるとは思ってないし、2度ある事は3度あるで3体目のお代わりがあるとは思ってない……!」


 あの、水竜とか海竜の親玉的なデカいのを、ひたすらに解体していた。途中で装備が壊れたから作り直すのに1回、置く場所が無くなったから小屋を追加建設するのに1回手を止めたが、腐るともったいないどころではないのでそれ以外はひたすら解体作業だ。

 レベルが上がっていなければ不可能だった、と言い切れる作業も、まぁでも最低限の活動以外はログインし続ける事でどうにか終わりが見えた。とっくに塩は無くなっているから干し肉は作れていない。これが終わったら海水を汲みにいかないと。

 だが、それこそ船ぐらいある超大型の危険生物だ。一応どうにかギリギリとはいえ、このデカいのを3体も倒せば相当な経験値になった。その解体行動も含めれば、かなりレベルが上がっただろう。何より、ド希少な素材が山で存在している。


「これなら、嵐が来ても吹っ飛ばされない船になるかもしれない……いやそれは無理か。無理だな。元が嵐で吹っ飛ばされてたからな」


 まぁそれは無理でも、木だけで作った船より遥かに丈夫で速度が出る船になるのは間違いない。たった1人で船なんて大きなものをどうやって作るんだ、というのは、ファンタジープリセット故の不思議を全力で活用するしかないな。

 しかし今の最優先はこの素材の使い道では無くて、隣の島の探索だ。幸い突貫工事で粗しかないとはいえ、装備一式は作れたし装備した状態の動きにも慣れた。板もどきは元々十分な数があったから、岩場に行けば島までの道を作る事は可能だ。

 という事で早速行動。……の前に。


「せっかくこんな、大物も大物の素材があるんだ。世界樹の枝と結界の魔道具と組み合わせれば、何ならシステムをひっくり返してリスポーンできるようになるかもしれない」


 皮をはいだ世界樹の枝、デカいのの角(1体分3本)、結界の魔道具6つを使って、魔道具の性能を大幅に拡張する改造をしようと思う。

 世界樹の枝が最上位の杖の材料になる、というのは、ファンタジープリセットの「世界」であれば基本である。なおかつ、こういう気軽に出てきちゃいけない大物の角っていうのは、同じく最上位の杖の材料だ。

 なおかつ杖によって発動させることが出来る系統の魔法を使える魔道具は、杖と組み合わせる事でその効果を跳ね上げられる。



 デカいのの角はへき開のある宝石にも似ていて、その方向を見定めて丁寧に割っていけば、芯の所にある、最上質のアクアマリンのような淡く透き通った青色の部分が出てくる。これを形を整えた世界樹の枝の、真ん中辺りの穴にはめ込んで、まずは杖の完成。これを3本分作る。

 そして杖1本につき、半球型をした結界の魔道具を2つ、杖の上部分の平らなところを挟むように固定する。このとき使うのは世界樹の皮を煮込んで残った繊維を使って作ったロープだ。糸紬の魔道具があって良かった。本当に。ロープも編めるからなあれ。ちょっと魔力は食うけど。

 上の所に、真ん中に隙間の空いた球体が縛られて、真ん中辺りに透き通った青色の線がある。そんな見た目の杖を3本作った。性能の細かい所は確認できないけど、たぶん酷い事になっているんだろうな。



 で、その3本の杖を、移動する前の拠点まで持っていく。現在は最初の状態に戻ったその場所に、3本の杖を正三角形の角にあたる配置で、一緒に作っていた杖立に立てて固定。

 その杖で出来た正三角形の真ん中に、ギリギリ修理が出来た最後の結界の魔道具を置く。素材の受け止めと回収、危険生物の気絶と運搬、その他諸々危険の防御と排除を設定した。

 そして最後に、あのデカいのから手に入った、黒く見えるほど青い魔石を、真ん中の結界の魔道具に設置して、起動させた。

 瞬間。


「ん!?」


 ドゴォォオオオオオ!! と、何かが凄い勢いで飛び出すような音が響いた。慌てて近くの木に登って周りを見ると、どうやら島全体が結界で覆われたらしい。それはそういう風に設定したからいいんだが、辛うじて遠くに何か、たぶんこの状態でも見えるって事は、相当に大きなものが飛んでいくのが見えた。放物線を描いて。

 この島から離れる方向に飛んで行っているので、恐らく今結界を起動したことで「危険」と判定されて、強制排除されたんだろう。が、かなり大きいもので「危険」と判定されるものが、この島にあったかというと……。

 ……心当たりが1つ浮かんだので、それがあった筈の場所へ、一応様子を見に行くことにした。


「あぁ、やっぱりあの石板か。……何かダメな効果があったんだな。嫌な気配はしたが」


 それは初日に見つけた、漂着がどうのとか生還をお祈りしますとか書いてあった、あの石板があった場所だった。石板というより巨大な石碑だったし、文字はしっかりとした深さで彫ってあったんだが、そこは大きく地面が抉れているだけで何もない。

 この抉れ方からして、もしかしたら地面に埋まっている部分にも何か書いて彫ってあったのかもしれないが、全力で出力をブーストした結界が「危険」判定したんだったら、何か罠でも仕掛けられていたのかもしれない。あるからな、見たらアウトの即死罠。ファンタジープリセットの「世界」には。

 とはいえ、これ以上気にする必要は無いだろう。何しろあんな勢いで吹っ飛んで行ったんだ。それに運営がシステム的に戻したところでまた吹っ飛ばされるだけだし、それを防ぐにはあの杖と結界の魔道具を消去しないといけない。


「あれはちゃんとした「設置物」だからな。エラーも出てないのに所有者のいるオブジェクトを排除する事は出来ないように、基本コードの時点で厳重にロックがかかってる。ここまで雑な仕事をしている管理運営者がその辺触れる訳がない」


 つまり再設置は不可能って事だな。

 さて、今日はこのまま岩場の方向の島を確認に行こう。


「……おっと」


 と、思ったら。


「そういやそんな事も書いてあったな。まず間違いなく海賊入りだと思ってたから無視したが」


 その岩場に、しかも丁度向こうの島への進路を塞ぐ形で。巨大な船が、漂着というか、岩場に引っ掛かっていた。

 たぶん座礁したみたいな事になっているんだろうし、これを修理するのは無理だ。そもそも、1人で動かせる大きさじゃない。種類的に帆船だし、横に大きな穴が開いているのを見る限り、少なくとも縦に3階分はありそうだ。

 だからこれを修理するのは無理。という事は。


「まぁ貴重な素材の塊だ。ありがたく解体して頂く事にしよう」


 自分で作る船の素材にするのが最適解ってやつだな。

 デカいの3体に続いてまたしても大物だが、日が暮れるまでには解体してやろうじゃないか。何しろ随分レベルが上がったからな。どんどんタイムは縮むぞ?

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