第9話 5日目(日中)
ギリギリまでログアウトを遅らせて、可能な限り早くログインする。なおかつ普段はやらないような隙間時間みたいなタイミングでもログインする。これを繰り返したお陰で、どうにか結界も出入口前のスペースも持たせる事が出来た。
とはいえ、朝が来たって分かるのは、飛んでくるものが変化したからなんだが。やっぱり「夜になると危険生物が増える」みたいな条件が追加されていたらしく、危険生物じゃなくて漂流物だった筈の色々なものが飛んでくるようになったんだよな。
生物ではないから結界の設定に引っ掛からなくて、世界樹の枝が小屋の壁を突き破って突き刺さった時はどうしようかと思ったな。もちろんすぐに結界の設定を追加して、非生物が結界にぶつかった場合は、勢いを殺して受け止めて、出入口前のスペースに移動させるようにした。
「そうなると当然、流木やらなんやらの回収で大変な事になる訳で」
結構広く作った筈だし実際板もどきを作って端材を焚き火で燃やせば少しずつ減っていた素材の山。部屋にぎっしり詰め込んでいたのがちょっとは隙間が空いてるぐらいになっていたのが、見事に部屋の中にぎっしり状態に逆戻りだ。
いやまぁ、素材を集めるのを諦めればいいだけなんだが。それだけの話なんだが。飛んでくる素材を全部集めているから忙しくなっているんだから、素材を集めずに作業をすればいいだけなんだ。
それを集めているのは、結界を使うまでで結構な量の板もどきが無駄になったからだ。あんなに大量の危険生物が文字通り飛んでくるとは思わなかった。後は、結界を使うのを躊躇ったのもダメだったな。
「だからまぁ、忙しいのは仕方ないな。うん。自分の判断ミスが原因なんだから」
という訳で、相変わらず真っ暗で、一応設置しておいた灯りの魔道具が無いと何も見えない。この魔道具を設置できたのも、結界を発動させてからだしな。何しろ飛んでくるものが多かったし危険度が高かったから。比較的直しやすいものだって言っても、限度があるし壊さない方が良いに決まってるからだ。
なので全力で集めていた訳だが、仮想現実とは言え自然の力は強大だ。1人で砂浜と拠点を往復していた時の倍以上の物が飛んできているし、きっちり危険生物も混ざっているし、何より不思議な事に完全なゴミが混ざっていない。
「フィーバータイムなのでは?」
これは自分で集めるよりも効率が良いな? と気付いてからは、疑似魔石の消費が進むのを分かった上で結界の範囲を直径で3mほど広げて、その範囲に生えている木を伐って、板もどきを渡して床だけを作った。そしてそこに飛んできた非生物を集めるように結界の魔道具の設定を変える。
すると、見る間に積み上がっていく大量の流木や壊れた魔道具。時々他の島に生えていた木が根っこごと吹き飛ばされてきた感じのやつも混ざっている。ちゃんと木材とそれ以外で場所を分けるように設定したから、木関係の素材で魔道具が潰されて修理不可能になる、という悲劇は起こらない。
素材を自分で運ばなくても集められるようになったら、まずは危険生物の解体だな。そして肉は干し肉という名の保存食になって、それ以外の素材は仕分けておいておく。
「だいぶレベルも上がって来たからか、板を作るのも大分早くなってきたな」
どんどん効率が上がっていく。良い事だ。ついでにいえばレベルが上がってステータス補正が大きくなるって事は、危険生物の解体速度も上がるし、魔道具を修理できる範囲も広がるって事だ。
結界の魔道具は、複数同時使用する事でその効果が上がる。それもかなり上がる。そして結界の魔道具は修理するのに時間がかかるし共食い整備しか出来ない類だから、数を揃えるのは無理かなと思っていた。
だが今こうやって、壊れた魔道具がどんどん飛んでくる上に一気にレベルが上がっている。という事はつまり、壊れている部品を修理して使うって事も出来るようになる訳だ。流石に部品を作る事は出来ないが、部品を修理する範囲は広がるからな。
「普段から割とサバイバルしてて良かった……」
まぁだからと言って、遭難したい訳ではないんだけどな。当たり前だが。この「世界」を作った奴らは捕まれ。何なら中からできるだけの細工はしておくし出来ればダメージは与えておきたいが。
その為にも「壁」に辿り着く必要がある。そのためには船を作る必要があって、非常に大量の板が必要だ。なおかつ船を作るのに使える板は、木を伐って作った木材から作らなければならないし、この島を裸にしたところでちょっと木材の量が足りないだろう。
だから板もどきを大量に作って、近くにある島に渡って、そこの木を伐る必要がある訳だな。今嵐の直撃でそれどころじゃないというか、そもそも結界の外に出られないが。さっさと小屋を作ってそこに避難していたし、途中から結界の魔道具を使い始めたから比較的平和で無事とはいえ、たぶん外に出てたら最悪風で吹き飛ばされる。
「あのでっかい世界樹の枝ですら飛んでくるんだから、一応標準の人間と同じ大きさと重さなんて、一瞬も持たずに吹き飛ばされるに決まってるんだよな」
初期地点に死に戻れれば良かったんだが、噂で聞く限り一回力尽きたらそこでアバターデータはロストする。犯人の手にデータが渡るよりはマシかもしれないが、再設定の手間が死ぬほどかかるから、絶対に阻止しなければならない。というか、だから生還が必須条件なんだし、その為に全力で行動してきている訳だ。
まぁでも、防御さえできればこの嵐は色々な物を運んでくれる労働力となる。実際ここにきて大幅に捗ってるしな。あくまで船を作るとするなら、応急処置とか内装にしか使えない板もどきしか作れてないが、島へ渡るなら、多ければ多いほど良い。
何しろファンタジープリセットな仮想現実だっていうのに、アイテムボックスとかインベントリとか、そういうものが使えないからな。手で持つか、台車に乗せないと運べない。しかも足場は波で揺れる。なら、幅をしっかり持たせるしかないだろう。
「ただそろそろ、塩が無くなって来たな。海水を汲みに行きたいけど、海岸に近付いたら最悪、飛んできたもので一発即死があるし」
結界の魔道具を修理して持ち出せるようにしたところで、入れ物に入れて持って帰れる海水の量なんてしれている。なおかつ、塩が必要なのは解体した危険生物の肉を保存食である干し肉にする為だ。真水は正直余っている。回復薬の原液を作ったり薄めたりするのに使うだけだから。
ただ保存食は多いに越した事は無いし、そもそも頑張って解体しているのは肉が腐ったら最悪だからだ。この雑で殺意が高い感じ、病気状態異常が実装されていてもおかしくない。清潔さは大事だ。本当に。
今この場所はちょっと島の内側に入ったとはいえ海岸に近いし、その海岸は岩場だし、岩場だったら岸に近くても深い場所はあったし、それこそホースを伸ばしてポンプで海水をくみ上げるようなことができれば……。
「ん? 確か壊れてる中に無かったか?」
あった気がする。そういう魔道具と、結構長い防水ホースが。
優先順位はかなり低かったから、かなり奥の方に押し込んでた気もするが。
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