第2話 波に呑まれて

 ずっと、前から。ハンカチを拾ってくれた日。その日を忘れることはできないだろう。笑うとえくぼができる可憐な貴方。小さな事で一喜一憂できて髪をいじるのが好きでよくヘアアレンジをしてくれて。

 優しい子で人の幸せを自分のことのように喜べる素直で素敵な人。そんな貴方が今日私だけの貴方でなくなる。幸福そうに笑みを浮かべて指輪を嵌めた貴方は。

 私が先に好きになったのに、腹の奥底に積もり積もったものが目から出てきてしまいそうでぎゅっと首が締め付けられるようで。苦しくて私を選んでよ、そんな言葉も吐き出しそうになるのを唇を噛み耐えて。

 あ、私貴方の幸せを願えない。だって考えたくないこれから貴方は私の知らない男とこの先を共にして子供も授かったりするかもしれない。

 津波のように押し寄せるとてもじゃないけれど人様に見せられないこの想いは、何年否何十年かけて薄らいでくれるのか。

 私を選んで欲しかった、私と共に生きたいと言ってほしい。

 この先の幸せを願えない私は一人で身に余るほどの重い想いを抱えながらただ同じところで自分自身を抱きしめて呪い続けるのだろう。

 

 嗚呼、私の恋いつか消え去るまでどうか私の足枷でいて。

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笑顔 おとうふ @hcja5txf

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