家庭という地獄を生きた姉妹の、最初で最後の会話

この物語は、姉妹の「別れ」と「確認」を描いた作品です。
テーマとしては「生きる」「死ぬ」と重めですが、それを感じさせないさっぱりとした文体と繊細な描写で、最後まで読者を引き込んでくれます。

僕は最初に読んだとき、作品世界に寄せすぎてしまい、スケールを矮小化して捉えてしまっていました。
しかし再読して気づいたのは、お互いに助けを求めながらも、助けることができないまま、孤独同士が何とか生き延びて今に至ったという記憶の共有。
そして、「死にたい」と言いながらも生きているという逆説が生む、二人の“確認行為”の尊さでした。

この作品で特に魅力的なのが、煙草や欄干、手を振るといった映像的な所作と、それに呼応する姉妹の距離感です。
四条大橋の中心を軸に、そこが二人の人生の分かれ目となっているような構図が鮮やかで、過去を共に歩んできた二人が、ラストで左右に分かれていく様はまるで映画のワンシーンのようでした。

そして、映像の中だけに閉じないのがこの作品の素晴らしさです。二人をつないでいるのは、あくまで“言葉”であり、“記憶”です。
姉妹が互いの過去を言葉で確かめ合うことで、物語が終わり、また新たな物語が始まる――そんな希望の余韻すら感じました。

現実では、最後の会話を“言いたかったこと”で終えるのは難しいかもしれません。
それでも、経験してきた地獄にピリオドを打ち、新たな人生を歩み出すために、やはり言葉の力は大きいと感じさせられました。

「気楽に死ねる」「安らかに死ねる」――この対比は、互いの幸せを願う優しい言葉であると同時に、読者としても、二人がこれから幸せに生きていってくれることを祈らずにはいられない秀作です。

ぜひ、ご一読を。