第18話
「し、しかし、まだ婚約を結んだばかりなのであろう? それなら俺が呼び戻してやるといえばこちらへ戻ってくるのではないか?」
焦りを押さえてそう提案する。ヒューバートは眉間に皺を寄せた。
「何をおっしゃっているのです! スカーレット様は殿下の気まぐれに振り回されて隣国へ渡ったのですよ? 幼い頃からの婚約をあっけなく破棄されて傷ついたであろう彼女が、今さら呼び戻したところで帰って来てくれるはずがありませんよ!」
「それなら婚約破棄は撤回してやろう! ノーラとの結婚は取りやめる。改めてスカーレットとの婚約を結び直してやるから戻って来いと伝えろ!」
「えっ!? ダリウス様、何をおっしゃっているんですか!?」
ノーラは目を見開いて俺に詰め寄ってきた。
ノーラには悪いが、正直この女がこんなに役に立たないとは思わなかった。確かに感じていたはずのノーラへの愛情も、ずっとそばで見ているうちになんだか薄れてきた気がする。
ノーラは可愛いには可愛いが、スカーレットのように幼い頃から身に着けた気品は感じられず、見慣れた今では安っぽく見えるのだ。
ノーラを妃にするよりは、可愛げはなくとも結界を張るのに役に立ち、貴族としての優美さを備えているスカーレットを妃にした方がよかったのではないかと思い始めていた。
「ひどいですわ……! ダリウス様なんて嫌いです!!」
ノーラはそう言うと、顔を覆ってうずくまってしまった。
そんなノーラのことが目に入っていないかのように、ヒューバートたちは俺に詰め寄ってくる。
「ダリウス様、お言葉ですがスカーレット様と婚約を結び直すのは絶対に無理かと思われます」
「なぜだ! あの女は俺に惚れていたはずだろう!? 俺が婚約し直してやるといえば喜んで帰ってくるはずだ!」
「失礼ながら、我々にはスカーレット様がダリウス様ご自身に好意を抱いているようには見えませんでした」
「ええ、失礼ながらスカーレット様が殿下に興味があるようにはとても……」
ヒューバートたちは本当に失礼なことを言いながら、お互いうなずき合っている。
「……無礼な奴らめ! もういい! お前達には任せられない。俺が直接スカーレットに会いに行く!」
「あっ、お待ちください、殿下!!」
俺はそう言うと、魔術師団を振り切って馬車に乗り込んだ。
結界の前ではまだノーラがしゃがみ込んで泣いていたが、そんなことはどうでもいい。団員の誰かが何とかするだろう。
早くスカーレットに会いに行って取り戻さなければ。
俺は焦る気持ちを抑えながら、聖都の城へ戻った。
直接アウロラ帝国にでも何でも行って、スカーレットを取り戻してやる。
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