第6話

 そして、婚約破棄後初めての遠征の日。


 本来ならダリウス様が結界にかけた魔法に強化魔法をかけるため私も同行するはずだったけれど、私はダリウス様に来るなと命じられていたので、お言葉に甘えてお屋敷でのんびり過ごすことになった。



 今日の遠征には宣言通りノーラが同行するらしい。


 光魔法が使えると言っても、平民として暮らして来たノーラにそれほど高度な魔法が使えるとは思えない。


 実際、魔法学の実技でもノーラの魔力はそれほど強くないように見えた。


 大丈夫なのだろうかとは思うけれど、婚約破棄された以上私が関わることでもないかと考えるのをやめた。



 すると部屋の扉を叩く音がした。


 扉を開けると、そこには困り顔をしたお父様とお母様が立っていた。


 婚約破棄以降、両親は学園の生徒たちと同じく私を気遣い通しだった。そんな彼らが躊躇いがちに提案してくる。



「スカーレット。とんだ災難だったな。私たちもお前と王子殿下の婚約を無理に結ばせたことを後悔しているんだ」


「ええ、ごめんなさいね、スカーレット。あなたさえよかったらお母様の実家の領地でしばらく羽根を伸ばしてこない? もうすぐ長期休暇に入るでしょう。自然の多い場所でゆっくり過ごしたら気も晴れるはずよ」


 二人は眉尻を下げたまま、代わる代わるいう。



 お母様の実家……。それもいいかもしれない。


 お母様の実家は聖都から遠く離れた場所にある。あそこまで行けば、ダリウス様やノーラを見ることも、噂が入ってくることもないだろう。


 私は幼い頃に何度か訪れたことのある長閑な母の故郷を思い出した。



「それでは、お言葉に甘えて休暇中はお母様の実家に滞在してもよろしいでしょうか」


 私が言うと、両親はほっとした顔で、ぜひそうしようと言ってくれた。


 こうして私は、休暇の一ヶ月間を聖都から遠く離れた田舎で過ごすことになったのだ。

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