第2話

***


 翌日、私はいつも通り学園に向かうため馬車に乗り込んだ。


 私の通うルシア聖学園は、国中の貴族たちの集まる由緒正しい学園だ。


 ルシア聖国に生まれた貴族たちは、十二歳になるとこの学園に入学して魔法や貴族社会について学び、十八歳で卒業することになっている。


 私も王太子であるダリウス様も、例にもれず十二歳からこの学園に通っていた。



 学園に通っているのはみな、幼い頃から貴族としての教育を受けた生徒ばかり。


 日々同じような会話をし、同じように微笑み、同じように真面目に勉強に取り組みながら卒業していく。少々刺激に欠けるものの至って平穏な日々が続いていた。



 そんなある日、この学園には珍しい編入生がやって来た。


 やって来たのはノーラという少女。現在は伯爵家に籍を置いているらしいが、なんと彼女は平民の出身だった。


「はじめまして。ノーラと申します。みなさんと仲良くなりたいです! どうぞよろしくお願いします!」


 教室の前で教師に紹介されたノーラは、元気よくそう挨拶した。


 リボンで二つに結んだミルクティー色の髪。ぱっちりした青色の大きな目。とても可愛い子だった。


 先生の説明によると、ノーラは光魔法を使うことが出来るらしい。


 つい最近まで聖都の平民学校に通っていたが、そこで魔法学の授業を受けていた際、偶然光魔法を発動したのだそうだ。


 話を聞きつけた貴族があれよあれよという間に引き取りたいと殺到し、ノーラはとある伯爵家に養女として引き取られることになった。


 それからこの学園に転入してくることになったのだそうだ。



 珍しい光魔法の才能を持った少女の登場に、教室中がざわめいていた。


 光魔法を使えるのは、王族と一部の大貴族を除けば突然変異的に生まれる者のみ。ノーラはその大変貴重な人物の中の一人なのだろう。


 ノーラが光魔法を使えると発覚した途端、引き取りたいと言う貴族が殺到したのも、すぐさまルシア聖学園に編入することになったのも、うなずける話だった。



 クラスメイトたちは皆、興味津々の目でノーラを見ていた。


 ノーラは先生に席を指し示されると、ステップを踏むような軽い足取りでそちらまで向かい席につく。


 それから周りの子たちとにこやかに挨拶を交わしていた。


 まるで人懐こい犬みたい。


 この学園にはあまりいないタイプだ。


 私はざわめく教室でノーラを眺めながら、他人事みたいにそんなことを考えていた。

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