第14話 緑主人公フェリペ

 マリアさんが。ロレンツォさんに手紙を送ってついたであろう頃、セシリアのお父さんが派遣はけんしてくれた専門家達が到着する。


「ジョバンニ様、お父様が派遣された専門家の方々が到着されたそうです」


「そう、さっそく会おう」


「はい」


 俺達は執務室しつむしつを出て、応接室へと向かう。



「あらっ、フェリペが来てくれたのですか?」


「セシリア姉さん、元気そうで何より。父さんに頼まれてさ。セシリア姉さんを助けてやってくれって」


「そうだったのですか」


「それに、兄さんもいるからこっちは、心配ないからなってさ」


「お父様らしいですね」


 セシリアがフェリペ君に微笑ほほえむと、フェリペ君も愛くるしい表情で笑う。



 見覚えのある顔だった。だけど直接見たわけではない。ゲームの中であった。


 年齢は確か20歳手前。クリンクリンと巻いたくせのあるミディアムヘアの茶色の髪に、目元ぱっちりの愛くるしい童顔だった。そして、セシリアと違ってだいぶ小柄こがら。可愛い感じの弟キャラ? 見た目仔犬? という感じだった。


https://kakuyomu.jp/users/guti3/news/16818792437948007427

 

 で、ゲームの中では主人公選択画面のバックが緑なので、緑主人公なんて呼んでた。まあ、プレーした事なかったので、性格は知らない。まあ、反乱軍を帝都で組織するぐらいだから過激なのかなと思っていたのだけど。

 

 

遠路えんろはるばる、ようこそお出でくださいました」


「失礼致しました。はじめまして、ジョバンニ様。僕は、フェリペ・ワーダ。セシリア姉さんの弟です」


「よろしくフェリペ君」


 フェリペ君が立って挨拶すると後ろの方々も頭を下げる。そう、応接室の椅子に唯一座っていたのは、フェリペ君だった。まあ、それだけ身分差があるのだろう。


 俺は、椅子を持ってきてもらうと、みんなに座ってもらった。そして。


「セシリア」


「はい」


 俺がそう言うと、セシリアは皆に資料を配る。役に立つかどうか分からないが、自分なりに農場を見たり、ダイコクヤの話を聞いたりしてまとめたものと、ジョバンニが数年前に廃止した研究施設の資料と設備だった。


「こんなに潤沢じゅんたくに資金を用意して頂けるのですか?」


「うん、惜しんでも良い事無いしね」


「さすが、ジョバンニ様です。セシリア姉さんがれるのも分かりますよ」


「こらっ、フェリペ」


 セシリアが冗談ぽく怒ると、フェリペ君もぺろっと舌を出す。仲の良い兄弟のようだった。


 さらに資料を読んでいくと、フェリペ君の顔がくもる。


「う〜ん」


「どうしたの、フェリペ君?」


「いやっ、ちょっと……。ジョバンニ様が、研究所閉鎖されたのって、数年前でしたよね?」


「そうだけど、何かあった?」


「あっ、いやっ、う〜ん……」


 資料を見つつ、フェリペ君が悩みだす。なんか不備ふびがあったのかな?


 と、フェリペ君が。


「今から、この施設を直接見ることって可能ですか?」


 俺はセシリアを見る。セシリアは立ち上がると。


「まだまだお夕飯までにはたっぷり御時間があります。大丈夫かと思います」


「そう、じゃあ用意して」


「はい」


 セシリアは、そう言うと立ち上がって馬車の用意をしてもらいに出て行った。


「ありがとうございます」





「ふんふん、なるほど〜」


 さっそく俺達は、研究所へと向かう。数台の馬車に分かれて乗り込み、俺はセシリアとフェリペ君と同じ馬車だった。


 農業研究所。さすがに街中に作るわけにはいかないので、郊外こうがいにあった。だけど、出来るだけ屋敷からは近く馬車で行くのにもさほど時間のかからない距離だった。


 広大な研究用の農場と大きな研究施設。さらに研究者の方々や、職員さんの住居など、結構大掛かりなものになっていた。


「はい、直接水路の水を耕作地に注ぎ込むから余計に冷えてしまうのです。こうして、迂回うかい水路だったり、ため池に水を置いて置くことにより水温が上がり、影響を小さく抑える事が出来るのです」


「そうか、それなら早急そうきゅうに対策すれば、今年の影響を小さく出来るかもしれないね」


「はあ。ですがかなりの大工事です。多くの人員じんいんと、労力ろうりょくが必要になりますが……」


「大丈夫だよ。タイラー大公領軍がいるから、足腰あしこし鍛錬たんれんにもなるしね」


「さすが、ジョバンニ様です」


 セシリアがめる。


「はあ」


 フェリペ君は首を傾げるが、気を取り直して。


「後は、わら等で地面をおおって夜間の冷却を防いだり……」


「ふんふん、なるほど」


「後は……」


 フェリペ君の知識は半端はんぱなかった。そして、情熱もさすが農業大国の息子だった。



 そして、施設へと到着する。細かく色々なものが植えられた外の広大な農場を見て感嘆かんたんの声が上がる。まあ、ダイコクヤに頼んで、色々な作物を取り寄せて植えてあるだけなんだけどね。


 だが、研究施設の中に入るとフェリペ君の顔がくもる。なんか、まずかったかな〜?


 すでに勤めてもらっている職員さんには、外の農場の管理と共に、施設の掃除も頼んであった。綺麗になっていると思うけど。


「ジョバンニ様」


「うん」


「再度確認ですが、ジョバンニ様がこの施設の閉鎖を決めたのって、数年前でしたよね?」


「そうだけど……」


 そう、ジョバンニが金の無駄だって閉鎖したのだった。ジョバンニがタイラー大公領を統治? するようになってすぐの事だった。


 やらかしたかね、ジョバンニ君。

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