第8話 娼館から

「ここの馬鹿ばか公子こうしさあ」

 

「うん」

 

「帝都でジャポニア帝国の各国から、姫様達を無理やり出させてさあ」

 

「あ~、それ聞いた事はあるけど。どんなだったの?」

 

「何でも、タイラー大公家の直系の長子ちょうしのアレッサンドロはロリコンみたいでさ〜」

 

「うんうん」

 

「その弟は、DV男でさ〜」

 

「へ〜」

 

「で、ここの馬鹿公子は馬鹿だから残りを押し付けられたらしいぞ」

 

「えっ、可哀想かわいそう〜」

 

「ああ。行き遅れに凶暴女きょうぼうおんな

 

 俺は、ジャンヌさんを振り返ると、凄い顔をしていた。

 

「さらに、あのロレンツォ・ミナモートの婚約者」

 

「えっ、あのトーゴク地方の名家めいかの?」

 

「ああ。今売り出し中の俊英しゅんえい、ロレンツォ・ミナモートと、ただの女好きの馬鹿公子じゃ天と地ほどの差だな。マリア様もお気の毒に〜」

 

「本当に可哀想〜」


 ポンッ


 その時、背後から肩を優しく叩かれる。


「気にするな」


 ジャンヌさんだった。


「気にしてないよ。事実だし」


「いやお前は……。余計なお世話だったな、すまない」


「うん。それよりもさ、ジャンヌさんも飲まない?」


「いやっ、私は……。いやっ、頂こう」


 考えが変わったのかジャンヌさんが俺の隣に座る。そして、まったりと飲んでいると、途中から酔ったのか、何かジャンヌさんにベラベラしゃべり、そして。


ねむ〜。寝るお休み」


「ああ、お休み」


 俺は大きなベッドに横になるが、ジャンヌさんは壁にもたれかかり、剣を抱いて座り込む。


「ここで寝ないの?」


、遠慮しておく。戦場でもこうやって寝てるからな」


「そうか……。くーくー」


 こんな感じで、朝に娼館から帰る。



「ジャンヌさん不潔ふけつです!」


「不潔です」


 セシリアさんとマリアさんが並んで、ジャンヌさんをつめていた。


「私は護衛していただけだ」


「じゃあ、なぜ、ジョバンニ様の服からジャンヌさんの香りしかしないのですか?」


「しないのですか?」


「いや、ただ一緒にワイン飲んでただけで。それに壁に寄りかかって寝てたから、服がしわになってるだろ?」


「本当ですか、ジョバンニ様?」


「う〜ん、酔っていたから覚えてないな〜」


「ほら〜」


「うっ、いい加減にしろ!」


「キャ〜」


「キャ〜」


 セシリアさんを追いかけるジャンヌさん、そして、その後を追いかけて行くマリアさん。うん、平和だな〜。



 それからも俺は娼館しょうかんへと通う。ジョバンニの習性しゅうせいなのか? 俺が気に入ったのか?


 まあ、ジャンヌさんも気に入ったようで、最初から一緒に座ってワインを飲み交わしつつ、話したり、噂話うわさばなしを聞いたりする。


「そうか、お前の目的は、これか……。確かにここなら口も軽くなり、いろんな人物が集まるもんな」


「はい?」


 そして、ジャンヌさんは護衛はどうしたのか、酒量も増えていき、ついには俺がベッドで寝ると、離れた位置だがゴロンと寝っ転がり眠るようになった。だけど、俺も安心して良く寝れるんだよな。


「ん、やめろジョバンニの馬鹿。ん」


「はい?」



 そんな、ある日の事だった。


「今年の夏は始まったばかりとは言え、涼しいね〜。窓開けとけば涼しい風が入ってくる」


「そうですね~。うち家が農家なんですけど、今年の作物の育ち悪いってなげいてましたよ」


「えっ、食べ物大丈夫なの?」


「はい、このタイラー大公領にいる限り大丈夫だって言ってましたよ」


「良かった〜。タイラー大公領に住んでて良かったね〜」


「ね〜」


 あっ、思い出した。確か夏の終わりのイベントだったかな? セシリアのお父さんが、今年の作物の生育せいいくが悪くこのままでは、食糧不足の懸念けねんがあると帝都に直接乗り込んで訴える。対応したのが、フェルディナンド・タイラーなのだが、何故かなぐり殺してしまう。


 さらに、その知らせを聞いたセシリアさんも、自死じししてしまい。セシリアさんのお兄さんは……、なんだっけ? とにかく、主人公の一人であるセシリアさんの弟が、帝都に潜伏せんぷくし反乱軍の結成を目指すというイベントだった。


 これも三クズの失策だろうね。だけど、夏の終わりまでは、まだ時間がある。さあ、対策を考えよう。



 俺は、翌朝、娼館から帰ると、さっそく図書室へと向かう。図書室は、今までジョバンニは1回も入った事はない場所だった。しかし。


「なんで、ほとんど軍事関係か、戦闘関係なんだよ〜」


 俺は、思わず図書室で絶叫ぜっきょうする。


 さらに、タイラー大公領の役人を呼び出すと。


「今年は作物の生育が悪いそうだけど、知ってる?」


「いいえ、我々の専門ではありませんので……」


「そう。だったら、その専門家を呼んで」


「おりませんが」


「えっ、なぜ?」


「ジョバンニ様が、金の無駄だと言って解雇かいこしてしまいましたので」


「えっ!?」


 何やってんだよ〜、俺!


 どうすれば、どうすれば、どうすれば、どうすれば?


 俺が悩んでいると。


「直接見に行って、実際作っている人に聞けば良いんじゃないか?」


「そうか! ありがとう、ジャンヌさん」


「ああ」

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