確かな筆致で描かれる中編ダークファンタジー。
とある大陸、とある公国の少年公子と悪魔のお話であり、きたる終末への始まりにして終わりの物語。
主人公と契約を結んだ悪魔の両者を軸に、人間と悪魔、それぞれの魅力と恐ろしさ、儚さと救われなさにぐいぐいと引き込まれてしまいます。
全編通してシリアスな内容で、それ故甘いご都合主義などもなし。
個人的にはエティのツンツンした甲斐甲斐しさと、配下の悪魔たちが個性派かつカッコよくて好きでした(*´﹃`*)
作者の五十鈴様は、色々なジャンルのお話を書かれる方ですが、こちら続編の構想もあるとのことで、良ければこの機会に皆様ぜひお読みくださいませ!
<序章「カイーナ-Caina-」を読んでのレビューです>
物語は、大陸マエスティティアで幼い公子リュディガーが母と共に逃避行をする序章から始まる。戦火と追手、馬車の転覆、冷たい雨――外的な危機が細やかに描写される一方で、母子の関係や信頼の糸、ヴィーラント卿との接触といった内的情景も丁寧に描かれる。そこへ、突如現れる「悪魔」という存在が、物語に一気に不穏な色彩を添え、読者の視線はリュディガーの心境へと引き込まれる。
個人的に印象的だったのは、悪魔がリュディガーの手を取ろうとする場面だ。ここでは単なる脅迫ではなく、リュディガーの小さな意思や純粋な覚悟が際立つ描写になっている。悪魔の威圧と皮肉に揺れつつも、幼い声で「この手は取らない」と告げる瞬間の緊張と静けさは、文章の間と心理描写が絶妙に絡み合い、読後に強い印象を残す。
本作は、戦争の混乱、幼い主人公の孤独と責任、そして超自然的存在との接触が複雑に絡む構造になっているため、序章を読むだけでも世界観と登場人物の魅力を十分に感じられる。読者は、リュディガーの視点で歩を進めるように、戦場の緊迫感や人間関係の微妙な揺れを追体験するとより深く楽しめるだろう。