神社

在原銀雅

神社

ある日の朝、私は家の近くの古い神社の目の前を通った。その神社の鳥居は色褪せているが朱く、鳥居の先には10メートルぐらいの参道と古いお社がある。

 

この神社は平安時代からある神社らしく、祀っている神様は蛇の神様だ。と祖父に聞いた。そして、家にはそこの神社で撮った七五三の写真が飾ってある。


 その神社では毎年7月末に夏祭りがあり、近所の人たちが、屋台を出している。しかし、それ以外の時は誰もいなくて静かな神社だ。

 夏になれば神社の杉の木で蝉が鳴いている。そして、祖父からこんな話を聞いたことがある。


「あの神社の隅にある祠に決して参拝してはいけない」と、口を酸っぱくして言ってきた。


 そんな、祖父も数日前亡くなった。どうやら、この村には秘密の儀式があるらしく私はその儀式に参加することは出来なかった。


 母に祖父はどうなるのか、と聞いてみた。しかし、その話題を口にすると母に違う話題を切り出されてにごらされてしまった。


 私は話を濁されたのを不服に思いつつも、その儀式が終わるまで家で待った。


 それから、月日が流れ祖父の三回忌に差し掛かる時期だった。どうやら、隣に住むおばさんが突然、亡くなったらしい。何か訳ありのようだったが、何も話を聞かせてもらえることはなかった。


 そうして、おばさんの葬式が終わり、またもやあの儀式が始まるようだ。私は儀式が神社で行われることを知っていたので、神社の物陰からその儀式を見ることにした。


 儀式が始まり神主さんと村の老人たちが祠の前に立って合掌したあと、祠の扉を開けこう神主さんは言った。


「祀られし、尼牙主命(あまがぬしのみこと)。御饌(みけ)を捧げ、安寧を……」


 その後、何を言っているか分からなかったが、どうやら遺体を神様に捧げるようだ。御饌は神様の食事と祖父から聞いたことがある。


 すると、祠から白い蛇が出てきた。するとその蛇は美しい女になり、神社のお社の中に入っていった。


 そこから、その女はお社の外へ戻ってくることはなかった。


 私は何か変なものを見てしまったと思ってその場を離れた。


 とにかく走った。その後、私の身に何かが起こることも知らずに


 翌日。私は昨日のこともあり、寝れずに午前11時に起きた。私は起きたあとすぐにシャワーに入るので洗面台に向かった。


 洗面台の鏡を見て私はとても驚いた。


 なんと、私の頬に変な模様があったのだ。


 私の驚いた声にリビングにいた両親が私のもとへ寄ってきた。


 私の顔を見るなり、両親は震えだし、顔が真っ青になった。


 「い、今すぐ神主さんを呼んでこないと!」


 母は大慌てで神主さん呼びに行き、父は私に昨日何かしたのかを聞いてきた。


私は昨日、儀式を覗いたと父に話した。次の瞬間父は更に顔を青くして、私に続けてこう言った。


「あの、儀式を関係のない人が見ると尼牙主命に魅入られてしまう」と


 尼牙主命はこの地に降り立った蛇の女神だと言う。尼牙主命は幸福をもたらす神としても名高いが同時に厄を呼ぶ邪神でもあるらしく、私が昨日見た女は尼牙主命の邪神の姿でこの姿を見たものは魅入られてしまい、やがて邪神の下僕になるようだ。その下僕は腐った姿のものや白骨化した者、生きている人のような姿をしているという。


 そんな神様に私は魅入られてしまい、1週間ほどお社の中にいなければならないと言う。理由は聞かされなかったけど…。


 1週間後。私はお社を出た。神主さんに見てもらうと…思いも寄らない事を神主さんが言った。


 「尼牙主に魅入られて、婚約をさせられた。もう二度と家には帰れない」


 私はそう聞かされて言葉を失い、後悔した。なぜ、あの儀式を覗いたんだろうと…後悔しても、もう遅い。


 そうして私はお社の中で暮らすことになってしまった。


 私はこの地に代々伝わる神楽の面をつけ生活した。これが、尼牙主が好きな役の面らしい。


 ちなみに、この地に伝わる神楽なのだが、尼牙主がとある男に惹かれるという物語なのだが、その男の顔が私にそっくりだったと言うことも魅入られ、婚約をさせられた要因の一つだろう。


 だが、もうその話も10年程前だ。今となっては慣れてしまい、この生活も悪くないと思い始めている。


 お社の外に見える杉の木を見ながらあの日のことを今でも思い出す。

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